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【支払基金改革を考えるC】支部の集約化 必要性乏しく

全国保険医新聞2018年7月5日号より)

 

 

 医療機関に診療報酬を支払う支払基金の「改革」に向けた議論が進んでいる。全国社会保険診療報酬支払基金労働組合(全基労)中央執行委員長の平岡信彦氏に医療への影響などを連載で解説してもらう。(6回連載。第1回「国民の医療保障に関わる」第2回「医師の裁量否定しかねない」第3回「医療保障の確立に貢献」)。

 

実証テストを6月から開始

 規制改革会議の議論ではICTを使った審査の拡大と合わせて支払基金の合理化を求める意見が相次ぎました。「効率化計画」では「支部組織の見直し」とし、「審査事務については、業務効率化に併せて集約化していくことを基本とする」と、現在47都道府県にある支払基金支部の事務職員を集約化する方針が示されています。
 その具体化として6月から「実証テスト」という「試行」が実施され、6、7月の2カ月間、福島支部の職員(定数56人)のうち39人が宮城支部で、審査事務点検をはじめとする業務処理を行っています。
7、8月には佐賀支部、熊本支部から福岡支部に、10、11月には滋賀支部、京都支部、奈良支部から大阪支部に、審査委員会に対応する一部の職員を残し、集約支部に勤務することになります。
 通勤時間の延長や通勤できない職員はマンスリーマンションでの生活となるなど、生活環境の変化は支払基金職員にとって、大きな負担です。

 

支払基金理事会でも批判

 支払基金は、実証テストの目的を「実際の業務運営の実現性と課題を抽出・検証し、審査事務の集約化と審査支払業務の効率化による支部組織・職員体制の在り方を見直す」としています。
 しかし、各都道府県に支払基金支部があり、審査委員会があり、職員がいることで、どのような不具合が生じているのか、業務処理上の問題点がどこにあるのか、その説明は全くしていません。支部を集約する理由は「規制改革会議で指摘され、『効率化計画』で決めてしまったから」以外にありません。
 支払基金理事会でも診療担当理事から、「あえて負担のかかる仕組みを今やろうとしている」「現実的に考えて、明らかにサービスレベルは下がるに決まっている」「表面的にサービスのレベルの低下はなかった、維持されたからといって背景には、かかわる職員の負担が数倍になる」と指摘されています。

 

役割が果たせなくなる

 支払基金は現在、医療機関に対しては査定理由、保険者に対しては原審理由を相手が納得できるように知らせることを重視しています。これは支払基金の役割として、重要なことです。
 しかし集約化によって職員が少なくなった支部では、医療機関からの照会に対する丁寧な対応や訪問による説明・懇談に支障が生じることになります。また、保険者との打ち合わせも重視していますが、集約化により地元保険者との関係も希薄になることは間違いありません。
 集約化は、医療機関や保険者との関係だけでなく、審査委員会と職員との連絡・相談等にも支障が生じます。支払基金職員は担当する医療機関に関し、同じ医療機関を担当する審査委員と連絡・相談しています。審査委員会に直接対応する職員だけが審査委員会を「補助」しているわけではありません。
 こうした医療機関や保険者との連絡・調整機能、審査に対する事務的な補助は、保険の範囲内で医師の裁量権を認める現行制度の中で支払基金の機能を発揮する重要な側面だと言えます。あえてこの機能を弱めてまで、集約化をする必要があるのか、大きな問題です。

以上