ジェンダー4署名

保団連は、ジェンダー平等に向けた4つの署名に取り組んでいます。

女性差別撤廃条約

選択的夫婦別姓

慰安婦問題

家族従業者の自立

署名① 女性差別撤廃条約選択議定書のすみやかな批准を

女性差別撤廃条約って? →→→→→→→世界の女性の憲法です

1979年に国連で採択された、女性の権利全般に関する国際規定で、法的拘束力があり“世界の女性の憲法”ともいわれます。日本は1985年に批准しました。「個人、団体、企業」による「法律上の差別」も「事実上の差別」もなくすことを求めています。さらに、母性保護を目的とする特別措置や、「事実上の平等」促進のための一時的な優遇措置(暫定的特別措置)を認めています。

条約を確実に実施するために →→→→→ 国の報告書を委員会が審議

条約を批准した国は、条約の実施状況を定期的に国連に報告します。23人の専門家による女性差別撤廃委員会が報告書を審議し、条約実施をすすめるための具体的な勧告をおこないます。各国NGOは、リポート提出、審議の傍聴、ロビー活動ができます。

選択議定書って? →→→→ 条約の内容を補う文書

条約に新しい制度を追加するもので、締約国は改めて批准する必要があります。女性差別撤廃条約の選択議定書の内容は、人権侵害を受けた個人やグループが委員会に直接申し立てできる“個人通報制度”と、委員会による“調査制度”です。委員会は申し立てを検討して「見解」を発表します。

選択議定書は現在115カ国が批准していますが、日本政府はずっと「検討中」です。批准を求める請願は参議院でこれまで20回も採択されています。選択議定書の批准を求める意見書は全国200以上の自治体で採択されています。

 

署名② 選択的夫婦別姓の導入など民法・戸籍法の改正を

選択的夫婦別姓って?  →→→→→ 同姓も別姓も「選べる」ということ

夫婦別姓が認められないため、望まない改姓、事実婚、通称使用などによる不利益・不都合を強いられる….その多くは女性です。法による夫婦同姓の強制((こんな国は日本だけ)は、両性の平等と基本的人権を掲げた憲法に反します。

2015 年、2021 年の最高裁は夫婦同姓の強制を合憲としましたが、制度のあり方は国民の判断に委ねるべきとしています。政府のすすめる通称使用(旧姓併記)の拡大では根本解決になりません。同姓も別姓も自由に選べる「選択的夫婦別姓制度」を実現すべきです。

女性の「再婚禁止期間」がようやく廃止!  すべての差別規定をなくそう

民法には、子どもの生まれた時期によって父親を推定する「嫡出の推定」規定があります。父親の推定が二重にならないためとして、離婚後の女性には100 日間の再婚禁止期間がありましたが、民法が改正され、離婚後300 日以内でも、他の男性との再婚後に生まれた子は“例外的”に現夫の子とみなされることとなり、再婚禁止期間は廃止されました。しかし、法律上の再婚をしない・できない場合には前夫の子と推定される(「嫡出の推定」規定は残っています。(「嫡出子」は差別用語です。出生届に「嫡出子」「嫡出でない子」の記載を義務づけている戸籍法を改正し、すべての差別規定をなくしましょう。

国内外の動き

国連女性差別撤廃委員会、国際自由権規約委員会、子どもの権利委員会、人権理事会は、選択的夫婦別姓の導入をはじめ、民法や戸籍法を改正して差別的規定をなくすことを日本政府に繰り返し勧告してきました。女性差別撤廃委員会における日本の女性差別撤廃条約実施状況の第9 次報告審議が2024 年10 月に迫り、「審議の前に民法改正の実現を」という声が高まっています。

ところが、第5 次男女共同参画基本計画では、「選択的夫婦別氏制度」という言葉そのものが削除されるという逆流が起きました。岸田首相は、民法改正によって「社会が変わってしまう」と国会答弁しましたが、社会はすでに変わっています。同性婚の不承認を違憲とする判決が相次ぎ、2023 年8 月の厚労省の調査でも、選択的夫婦別姓に賛成は6 割、同性婚賛成は7 割を超えています。

 

署名③ 日本軍「慰安婦」問題の解決を

日本軍「慰安婦」問題って? →→→→ 日本軍による女性の人権侵害

日本軍「慰安婦」とは、第2次世界大戦中、国内や朝鮮、中国、フィリピン、インドネシアなど日本の占領地で強制的に日本軍兵士の性処理の道具とされた女性のことで、国際
社会では「性奴隷」と呼ばれます。「慰安婦」問題は、戦時下に人権を侵害され、今も名誉が回復されていない女性の人権問題として、日本が解決を迫られている問題です。高齢化する被害者の「生きている間に解決を」という悲痛な訴えは、日々切実さを増しています。

政府は「解決済み」と言っています →→→→ 国際的には「未解決」

政府は、日韓請求権協定により「慰安婦」問題は「法的に解決済み」と主張しています。しかし「慰安婦」への加害は戦後補償の対象ではなく、被害者が納得できるような法に基づく公式謝罪や賠償もされていません。1993 年の「河野官房長官談話」では「軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」として「お詫びと反省」を表明しました。2015 年12 月の「日韓合意」で「最終的・不可逆的に解決した」といいますが、被害者の意見は聞いていません。女性差別撤廃委員会などの国際機関は、「問題は未解決」として、被害者への救済と被害回復措置を強く勧告しています。政府はこうした勧告を実施しないばかりか、勧告をした国際機関に抗議するという態度をとっています。

<国連女性差別撤廃委員会から日本政府への勧告要旨>(2016 年3月7日)

①「慰安婦」問題の責任を過小評価し被害者を再び傷つけるような公人の発言をやめさせること。
②被害者の救済への権利を認め、損害賠償、満足、公式謝罪、リハビリ措置を提供すること。
③「日韓合意」の実施にあたっては、被害者の意見を考慮し、真実・正義・被害回復措置への権利を保障すること。
④「慰安婦」問題を教科書に十分に取り入れ、歴史の事実を生徒や社会につたえること。

 

被害者の納得できる解決とは  →→→→ 事実認定、公式謝罪、再発防止

被害女性への重大な人権侵害の事実を認め、「慰安婦制度」の強制性を否定する発言や報道には明確に反駁すること、被害者が納得できる形での公式謝罪、国家賠償などにより、被害者の人権回復を行うこと、再発防止のため、教科書への記述を復活して次世代への正しい歴史教育を行うことが必要です。

 

署名④ 所得税法56条の廃止を

家族への給与は経費にできない! →→→→ 戦前の家父長制のなごり

中小自営業や農業は家族の労働で支えられていますが、家族への給与は経費として認められません。明治20(1887)年に導入され、その後の改正でも維持されてきた所得税法第56条で“事業主の配偶者や親族への給与は必要経費としない”と定められているからです。家族従業者の働き分(自家労賃)は事業主の所得に合算され、配偶者は86万円、親族は50万円が控除されるだけ。家父長制のなごりが、まだこんなところにあるのです。家族従業者の多くは女性であり、第56条の廃止は、ジェンダー平等、女性の地位向上につながります。

人権問題

所得税法第56条は、労働に対する報酬を認めない差別規定で、憲法14条・法の下の平等、24条・両性の平等、27条・労働の権利などに違反しています。実際に、家族従業者は所得証明が得られないため、社会保障は劣悪、保育所申し込みなどでも不利益を受けています。

国内外から見直しを求める声

家族従業者への給与を経費と認めるのは世界の流れです。女性差別撤廃委員会は2016年に「家族経営における女性の労働を評価するための所得税法見直し」を日本政府に勧告しました。第5次男女共同参画基本計画も「女性が家族従業者として果たしている役割に鑑み・・・税制等の各種制度の在り方を検討する」としています。第56条の廃止を求める意見書は、全国560以上の自治体で採択されています。

4署名のパンフレット

上記の内容をまとめたパンフレット(日本婦人団体連合会作成)をご活用ください。

A4両面印刷し、半分に折ってご利用ください。A5・4ページのパンフレットになります。