2024年9月12日
全国保険医団体連合会
会長 竹田智雄
9月9日、長崎地裁は被爆体験者訴訟の原告44名のうち、爆心地から東側の地区の住民15名に勝訴判決を、それ以外の地区の住民に敗訴判決を言い渡した。
長崎では、原爆投下直後に米国の調査団により全域で残留放射線の測定が行われ、詳細な調査結果が残された。しかし判決はこの調査結果だけからは放射性降下物が降下したとは言えないとした。一方で、線量率が高い爆心地から東側の地域については、黒い雨が降ったことを認め、この地区の住民を被爆者と認めた。
今回の判決で黒い雨が降ったことが認められた地区に隣接する地区の原告2名は敗訴しているが、黒い雨が降ったとの証言数について、勝訴した住民が居住する地区の証言数よりも敗訴した原告の住む地区の証言の方が多い場合があるなど、判決は矛盾するものとなった。
さらに、判決は、長崎県が設置した「長崎の黒い雨等に関する専門家会議報告書」から引用しているが、同報告書では「被爆未指定地域全域で黒い雨が降ったと認められる」と結論している。その点からも矛盾は明らかである。
本来的には、原爆による放射線の影響が認められる状況の下にあれば被爆者と認められるべきであり、黒い雨はその根拠の1つに過ぎないのであって、その他の被爆に関する証言や放射線の影響の下にあったことを示す資料を無視するべきではない。今回の判決が、またしても被爆体験者を線引き・分断する内容となったことに怒りを禁じ得ない。
被爆体験者の平均年齢は、既に85歳を超えている。解決のためには一刻の猶予もない。国、そして長崎県、長崎市は、勝訴原告を控訴しないことはもちろんのこと、被爆体験者問題の一日も早い解決を求めるものである。
以上