特集「沖縄──地上戦のあとに来たもの 見過ごされた歴史と、今に続く課題」
戦後、日本が復興に向けて突き進む中で、米軍統治下の沖縄では人々の人権が十分に保障されず、医療・福祉制度の整備も遅れた。1972年の日本復帰から半世紀たっても、その差は埋まることなく、「基地のない平和で豊かな島」を求める沖縄の民意踏みにじられてきた。日本という国は、沖縄にどのようなまなざしを向け、また何を見てこなかったのか。これまであまり語られなかった女性や子どもの視点を交え、現在に続く問題を考える。
命の平等を求めて 医師・仲西常雄と戦後沖縄の医療
沖縄では第二次世界大戦末期の地上戦で全ての医療施設が破壊され、1943年に163人いた医師は64人になっていた。占領下で社会保障制度の整備は遅れ、現在まで続く健康格差の問題にもつながっている。
戦下に生まれ、占領時の「日本留学」を経て、沖縄で診療所を立ち上げた医師・仲西常雄(78)のあゆみを追いながら、戦後沖縄の医療と現代に続く課題を見つめる。
(取材・構成:編集部)
沖縄の日本軍「慰安所」と米軍による性暴力現在に続く不正義に抗うために
性暴力に対する恐怖は、軍事基地や軍人らの傍らに暮らす者、とりわけ女性たちの生を縛っている。
沖縄戦時の日本軍「慰安所」制度と米兵による性暴力の歴史を振り返り、性規範という観点から、性暴力が矮わい小しょう化される仕組みや被害を訴えにくくしている社会のありようを見ていきたい。男女で異なる性規範や被害者を序列化する眼まなざ差しは、現代においても生き延びており、批判的に見直すことが求められている
玉城 福子
沖縄孤児院の歴史と現代に続く児童福祉の遅れ──子どもにとっての沖縄戦の現実
戦後の沖縄が子どもを大切にする道を歩むか、子どもへの無関心な施策の道を歩むかを巡って、4度の分岐点があった。それは①沖縄戦終結後に続く「アメリカ世ゆ」である米軍占領期の孤児院の設立・運営の時期、②1952年のサンフランシスコ講和条約発効から日本復帰の1972年まで、③復帰から現代までの「ヤマト世ゆ」、そして④1994年4月の子どもの権利条約の批准である。
浅井 春夫
沖縄に核を持ち込ませてはならない
「台湾有事」の問題は、有事に米軍が沖縄に核兵器を持ち込むことを認めた「密約」と深い関係がある。本稿では、50年前の沖縄返還に際してこの密約が交わされた経緯と密約の内容を詳述する。
交渉では、キッシンジャー米大統領補佐官が決めた巧みな交渉戦略に日本側が翻ほん弄ろうされたこと。また旧民主党政権の岡田克也外相が指示した密約の調査で、この密約には「効力がない」と判断された理由について、厳しく追及している。さらに密約文書が佐藤栄作元首相の自宅で発見されたが、外務省が文書の受け取りを拒否したことも明らかにする。
春名 幹男
沖縄米軍基地問題に向き合う 本土復帰50年の節目に
1972年5月15日、米国から施政権が返還され、沖縄県が本土に復帰した。しかしそれは、県民が望んだ「無条件かつ全面返還」ではなく、「基地付き返還」であった。以来、沖縄は、憲法や日本国内法が適用されない米軍基地が生み出す問題に苦しみ続けてきた。復帰50年の節目である2022年、沖縄の米軍基地問題を、日本全国の課題としてあらためて模索したい。玉城デニー沖縄県知事に、保団連の天谷静雄理事が話を聞いた。
診療研究
進化する手指衛生 第2回 消毒用アルコール、次亜塩素酸水、オゾン水の有効性の検証(後)
消毒用アルコール、次亜塩素酸水、オゾン水について、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対する不活化効果を明らかにした。次亜塩素酸水やオゾン水は幅広い抗菌スペクトルを持ち、手指衛生における消毒用アルコールの代替としては、医療機器認可された生成機を用いた微酸性電解水とオゾン水が有効と考えられる。ただし、有機物によって不活化活性が減弱するため、流水下で大量に使用する必要がある。
王 宝禮
診療研究
心不全治療の新たな展開(2)SGLT2阻害薬への期待
消活習慣や高齢化の観点から、糖尿病や心不全は生命予後に強く影響を及ぼし、適切な治療が必要とされる。SGLT2阻害薬は糖尿病薬として登場したが、大規模研究により心不全の予防・改善効果が証明され、今後、心不全標準治療薬として期待される薬剤である。しかし、心不全に対する作用機序はまだ十分には解明されていない。今回はSGLT2阻害薬の心不全への薬理作用、ガイドラインでの位置付け、筆者が行った臨床研究、今後の展望などについて報告する。
瀬在 明
診療研究
「ソニックサージェリー」を試してみませんか(2)──超音波スケーラーを使った歯周外科手術
今回はソニックサージェリーによる歯周外科手術の一例を紹介する。患者は左下6番の近心に6mmの歯周ポケットと約3mmの垂直的骨欠損がX線的に確認された。超音波スケーラーによる歯肉切開、剥離、掻把のテクニックを用いて最小限の侵襲にとどめた歯周外科手術を行った。手術は短時間で終了し、術者、患者ともに疲労が少ないと思われた。9カ月後には欠損部に骨再生と思われるX線的不透過像が確認され、歯周ポケットは2mmとなった。
金﨑 伸幸
寄稿
皮膚外用薬の2つの顔~基剤と主剤の特徴と留意点~
八巻 孝之
文化
(最終回) 正解がない世界を生き抜くために
色とりどりの花を咲かせる雑草たち。雑草の花の色に正解はありません。雑草は、多様な個性を持ち、それぞれが自分の持つ彩りを大切に生きているから、強いのです。そして雑草には、雑草魂と呼ばれるような「根性」よりも大切にしている生き方があります。最終回は雑草が持つ多様性、そして雑草が生きていくために最も大切にしていることを紹介します。
稲垣 真衣