平和に逆行する 軍事環境破壊 今日の公害問題

 政府は日本の防衛費の大規模な増額を行おうとしている。安全保障の名のもとに、軍事活動を一層強化する方針だ。安全保障イコール軍事ではない。それどころか、戦争だけではなく、平時の移動や訓練を含め軍事活動によって引き起こされる、公害、環境破壊の方がはるかに深刻である。それを「軍事環境破壊」と呼ぶ人もいる。
「THE BIG ISSUE 日本版389号」によると、2014年の米軍のCO2排出量(燃料消費部門のみで)は国別指標で45位である。うち空軍が56・5%(高高度で燃料を使うため温室効果は地上の2~4倍)、海軍33・6%、陸軍9・4%を占める。自衛隊も保有するF―35Aの燃費は1リットルあたり178メートルである。残念だが、京都議定書(1997年)により、軍事活動からの排出は、国家の排出量に含まれず報告の必要もないとされた。IPCCの報告書には軍事部門からの排出は含まれていない。日本も例外ではない。安全保障の名に隠れて、多くのデータが国家により隠蔽されている。
軍事基地汚染問題も深刻である。アジア地域でも米軍基地汚染が顕在化している。日本でも、米軍横田基地の長年の燃料漏出事故、横須賀基地、普天間基地、嘉手納基地等からの有機フッ素化合物の排出、騒音等枚挙にいとまがないが、軍事基地の性格により汚染の形態は異なる。基地汚染は日米地位協定が大きなネックになっている。しかしそれ以上に、軍事活動が本質的に人間や環境を破壊することを目的としているためだ。
今、憲法9条をもつ国として、さらに地球環境の破壊や温暖化にくみするのか、21世紀を「環境保全と平和の世紀」にしていくのかが問われている。沖縄県知事選挙が終盤に入った。(公害部担当理事 小澤 力)