大阪歯科協会の李容顕さんは、訪問診療を行い貧富の格差を目の当たりにする中で、「何としても75歳以上の窓口負担2割化を止めなければならない」と感じている。患者さんの現状などを聞いた。
訪問診療でわかる貧富の差
ひと月に40人ぐらいの在宅の患者さんを診察していると、貧富の差を本当に強く感じます。外来では生活状況までは分かりませんが、ご自宅に訪問すると暮らしぶりが一目で分かります。大方がつつましい生活をしており、わずかな年金から食費や水道光熱費を支払い、残ったお金で治療費を何とか賄っているのだろうなと思います。
治療中断の申し出も
患者さんの中には、「お金がかかるから治療を中断したい」と打ち明ける人もいます。たいていの場合、腫れたり、痛みが出たりして治療を再開することが少なくありません。合わない入れ歯を使い続け、口腔内を深く傷つけているケースも目にしました。「ずいぶんと我慢していたのだろうな」と胸が痛みました。
政府は10月から75歳以上の窓口負担を原則1割から2割に引き上げると言います。訪問診療の窓口負担は1回あたり1500~2000円ぐらいかかります。これがまるごと2倍になると患者さんの負担はとても大きく、「歯科治療を受けられない」という声が出てくるのではないでしょうか。何としても2割化を止めなければならないと思っています。