現場の困難に向き合うべき オンライン資格確認を考える④

骨太の方針2022は、マイナンバーカードの保険証利用などオンライン資格確認の導入義務化を打ち出した。問題点を連載で解説する。第4回は、告示された療養担当規則と医療現場の状況について考える。(随時掲載)

年末に免除要件拡大を検討

9月5日、療養担当規則改正が告示され、23年4月から電子レセプト(オンライン、光ディスク)請求する医療機関にはマイナンバーカードを保険証として利用(オンライン資格確認)できる体制整備を義務付けるとした。他方、中医協が確認した答申書「付帯意見」(8月10日)では、年末に導入状況を調査して、「地域医療に支障を生じる」など「やむを得ない場合の必要な対応」について検討するとしている。
オンライン資格確認を開始した医療機関が全体の3割、医科・歯科診療所では2割に満たない。これから、現在紙レセプト請求している医療機関に加えて、義務化を免除する範囲、さらには経過措置設定などが議論される。
告示された改正療担規則は、あくまで来年4月の施行となり、今後、さらに義務化を免除する対象が広げられる可能性が高い点に注意が必要だ。

対応困難、必要性低い声多く

2023年4月からのオンライン資格確認整備の原則義務化に対して、医療現場からは整備困難との悲鳴が噴出している。
保団連の会員調査(8月下旬実施)や協会などに寄せられる相談では、▽小規模・零細▽高齢▽数年内に閉院予定▽離島・僻地▽業者がいない▽整備に要する光回線を敷くのに大幅な改修費用がかかる―などで整備・運用が困難、そもそもレセプト返戻枚数が少ない、お薬手帳など現在の診療スタイルで十分に医療提供でき整備する必要性が低いなど切実な声が多い。
医療機関は、発熱外来実施で対応できないなど、新型コロナウイルス感染拡大の見通しもつかずさまざまな対応に追われている。相次ぐ通信障害やセキュリティ事故への危惧を訴える声も多い。国は医療現場の切実な声に真摯に向き合うべきだ。
オンライン資格確認は医療機関ごとにメリット、デメリットが大きく異なる上、患者・国民から見れば、マイナンバーカードも保険証として利用できれば便利という程度が実態だ。オンライン資格確認整備の原則義務化は明らかに行きすぎであり、医療現場の実態を伝えて義務化は撤回すべきとの声・理解を広げていくことが必要だ。少なくとも義務化を猶予・免除する範囲を大幅に広げるなど抜本的見直しは不可欠だ。