2度目のコロナ禍で実施された2022年診療報酬改定をどう見みるか、全3回で掲載する。2回目は「かかりつけ医」機能評価の動きについて取り上げる。
2022年改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)で厚労省は、「社会保障制度改革国民会議報告書(13年8月6日)」で打ち出された▽患者の大病院、重装病院志向の是正▽緩やかなゲートキーパー機能の導入▽大病院の外来は紹介患者中心に、一般的な外来受診は「かかりつけ医」に相談―等を議論の前提として位置付けるとともに、この間の改定で「外来医療の役割分担」推進のために、紹介状なしの大病院受診時の定額負担を導入し対象範囲を拡大、また「かかりつけ医」機能関連点数の評価・拡充を図ってきた。
ただここ数回の改定では、地域包括診療加算等の施設基準の緩和等を始めとして、医療現場の実情に沿った改定も行われている。しかし22年改定では、先に述べたような「かかりつけ医」機能の「実体」実現を強く求める財務省に押し切られて、機能強化加算について訪問診療や緊急往診の実績を求めるなど厳格化が図られている。
法制化狙い議論を提起
骨太の方針2022では、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」が掲げられている。社会保障の抑制政策の推進役を担う財務省や経済界の代表を組織する経済財政諮問会議、規制改革推進会議などは、この間厚労行政への介入を強めており、「かかりつけ医」機能については、法制化した上で、これらの機能を備えた医療機関を「かかりつけ医」として認定する制度の創設(利用希望者は事前に医師を登録)を提案している。これは早期の発見・治療に寄与するフリーアクセス(患者が必要と判断した際に受診)を制約し、事実上一人の医師(一医療機関)が一人の患者に対応する英国的なGPモデルの構築を狙うものだ。
「かかりつけ医」機能が医師法、医療法等で明記されれば▽受診機会への制約(患者負担増)はもとより▽診療報酬の抑制・削減―に利用されることは必至である。
その後7月20日に開催された「第10回・第8次医療計画等に関する検討会」で、「かかりつけ医」機能が議題とされ、コロナ禍を絡めて「かかりつけ医」機能の重要性が問題提起された。この検討会の議論で健保連の委員は「コロナ禍では全ての医療機関ではないが、かかりつけ医機能を担っていると考えられていた医療機関や、患者が『かかりつけ医』だと思っていた医療機関が(発熱外来等に)対応してくれないという事態が起こり、かかりつけ医とは何かという声が国民からわき起こった」などと、国民から見た「かかりつけ医」の姿が不明確だとして、機能の明確化と、機能を担える医療機関の見える化を要求した。
しかし「かかりつけ医」は患者と医療者の信頼関係をもとに醸成されていくものであり、枠組み先にありきではない。法制化の形ではなく、この間の診療報酬改定のように、先進的に奮闘する医師への評価とともに、複数の医師で一人の患者を支える現状を評価していくことが必要だ。