大阪協会内科部会は、1月29日に1月度内科研究会を開催し、「心血管腎合併・高度肥満合併など難治性の糖尿病への治療の取り組み-最新の糖尿病治療薬の進歩も含めて」と題して、国立循環器病研究センター(国循)糖尿病・脂質代謝内科部長の細田公則氏が講演した。概要を報告する。(報告 大阪府保険医協会 保団連研究部員 藤崎秀孝)
近年、糖尿病診療の進歩はめざましく、経口SGLT2阻害薬が登場し、新規のGLP-1注射薬では、週1回の注射薬や経口薬も使用可能となっているが、低血糖が少なく、肥満改善の効果のある薬剤で心血管腎疾患の予後の改善が明らかになり、現在、欧米のガイドラインでは心血管合併症のある場合、第1選択薬や第2選択薬になりつつある。 国循糖尿病・脂質代謝内科では、心血管合併症のある糖尿病患者、肥満・高度肥満のある患者、生活習慣病改善の難しい患者など、他の医療機関では対応の難しい患者について、アンモニア心筋血流PETや造影剤なしの心臓MRIなど、最新の診断機器を用いて全身合併症精査を行い、新規糖尿病治療薬や第3世代の認知行動療法と言われるアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)を専門とする心理士も含めて全職種参加の多職種カンファランスによりチーム医療で教育入院を行い、逆紹介をして、近隣の医療機関での診療継続をお願いしている(図1)。
講演は、新規糖尿病治療薬の内服の注意点を含めて、多くの難治性糖尿病肥満症をいかに治療しているかという斬新な示唆に富んだ内容であった。
CGM機器の進歩
まず、持続血糖モニタリング(CGM)の機器の進歩及びCGMを用いた糖尿病診療の研究について説明された。
CGMの機器については、フリースタイル・リブレなどの機器を用いるとスマートフォンなどを用いて簡単に測定することができるとともに血糖変動が手軽にわかるため患者に受け入れられやすい反面、誤差が多いことが欠点だと指摘した。
CGM機器のセンサーは皮下の数値を測定し、自己血糖値は血液の数値を測定しているため、皮下と血液では数値の変動に10分程度の時間差があることが原因で誤差が生じてくると説明し、併せて補正するアルゴリズムが作られていることを紹介した。
今後は、連続して測定・記録された血糖値や間質液中グルコース値を集約しその傾向を視覚的に把握する解析方法が一般的に普及するであろうことが述べられた。
新規糖尿病治療薬について
次に、新規糖尿病治療薬で、GLP-1受容体作動薬は血糖依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制する胃内容物排出遅延をおこし、食欲を低下させる。これらの結果、血糖値低下、HbA1C低下を引き起こす作用機序が述べられた。
また、GLP-1の多彩な生理作用が解説され、毎日注射、週1回注射、毎日経口を含めた6種類のGLP-1薬による主要心血管イベント、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の発症抑制が統計学的に解説された。セマグルチドの経口薬(リベルサス)については、正しい服用・保管がなされないと効果が減弱する注意喚起がなされた。
さらに、SGLT2阻害薬は近位尿細管での尿中グルコースの再吸収を阻害し、尿中へのグルコース排出と浸透圧利尿を促す作用機序があると解説された。
SGLT2阻害薬は低血糖少なく、体重減少があり、心血管と腎臓にエビデンスのある薬だが、注意すべき副作用として、多尿・頻尿がみられることがあり、特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者、腎機能障害のある患者、利尿剤併用患者など)においては、脱水や糖尿病ケトアシドーシスの発現に十分注意して使っていくべきであると、正鵠を得た注意喚起がなされた(図2)。
国循での難治性糖尿病治療
最後に、国循の難治性の糖尿病・肥満症の診療の紹介がなされた。対応の難しい患者について、最新の診断機器を用いて、全身合併症精査を行う、全職種の多職種カンファランスを中心としたチーム医療で心理、リハビリなど国循の多職種のチーム医療は入院に特化し、方向付けを行い粘り強く入院加療を繰り返す、大変斬新で有益な治療が紹介された(図3)。