理事 永瀬 勉
今年の原水禁世界大会は、ロシアのプーチン大統領が、国連憲章を無視してウクライナに侵攻し、2つの原子力発電所を爆撃・占拠し、自国の犠牲を顧みず繰り返し核兵器で威嚇して、核抑止力論が破綻する中、また、核兵器禁止条約の第1回締約国会議で、「ウィーン宣言」を採択し、8月1日から始まるNPT再検討会議に向け、核禁条約とNPT第6条は相互に補完するものだと主張する中で開かれた。3年ぶりに現地での開催となった。
私は、8月4日の開会総会と国際会議の1日目、8月6日のヒロシマデーにオンライン参加した。
開会総会の主催者報告では、NPT再検討会議を、これまでの合意事項の履行を核兵器国と核依存国に迫る国際世論を構築する場に発展させようと述べられた。ゲストスピーチでオーストリアのアレクサンダー・クメント大使は、「核の問題はギリギリの状態に来ている。唯一希望を見いだせるのは核兵器禁止条約だ。核抑止から抜け出せるか難しいかもしれない。しかし、核をなくす理論的な根拠ができている」と発言した。
国際会議では、ウクライナ平和主義運動事務局長のユーリイ・シェリアゼンコさんは、「ウクライナは核兵器を捨てたから攻撃された、核兵器を手放したのは間違いだったという主張がある。しかし、私はそうは思わない。核兵器を保有すれば核戦争に巻き込まれる危険性が強くなるからだ」と述べた。ロシアのフィンランド湾南岸公共評議会のオレグ・ボドロフさんは、「ロシアはウクライナで新しい形の核兵器をすでに使用している。それは、ザポロジェ原発を占拠しているからだ」と話した。また、最後に、「この大会が終わった後、私の身がどうなるか分からない」と述べ、ロシアの厳しい現実を知らされた。
ヒロシマデー集会での広島宣言では、核兵器は「絶滅」だけを目的とした「絶対悪の兵器」であり、その使用も、使用の威嚇も断じて許してはならない、その危険を根絶するには、核兵器の完全廃絶以外にないと述べられている。
核抑止力論から脱却できる日本政府を作ることがいかに大切であるかを感じた大会だった。