年末再検討に向け取り組み強める
来年4月から予定されているオンライン資格確認導入の原則義務化。全国保険医団体連合会(保団連)が実施した緊急アンケートでは、約8割が「反対」と回答した(図)。近畿医師会連合が現状に配慮するよう決議するなどの動きも生まれている。保団連は、地域医療に重大な支障をもたらしかねない原則義務化を撤回させるため、「閉院・廃院を検討」など医療機関の深刻な実態を集め、厚労省や中医協委員等へ要請を強めていく。
現在、電子レセプト(オンライン、光ディスク)で診療報酬を請求する医療機関を対象に、オンライン資格確認できる体制を義務付ける方向で議論が進められている。診療所の9割以上が義務化対象となるが、オンライン資格確認システムの運用を開始した診療所は全体の約2割(9月14日時点)に過ぎない。残りの約12万軒の診療所がさまざまな理由、事情で導入していないものを、半年足らずで義務化するなど無理筋である。
あと数年で引退を考えている高齢医師等からは、「閉院・廃業するしかない」「義務化の対象から除外してほしい」など切実な要望が寄せられている。システム導入後すぐに閉院・廃院した場合、補助金の大部分の返金が求められてしまうという問題もある。
少なくとも小規模、高齢、閉院予定、電子機器操作に不安・困難、コロナ対応で多忙などをはじめ、医療現場の実情を十分に斟酌した例外規定が必要だ。
拙速な義務化は再検討を―近畿医師会連合
近畿各府県医師会で構成する近畿医師会連合は9月4日の定時委員総会で、「オンライン資格確認の拙速な義務化は現状に配慮して再検討せよ」と決議した。
中医協では、年末に導入状況を調べ、経過措置を含め対応を検討する方針だ。日本医師会は導入困難事例などの相談窓口を設置し、年末の再検討に向けた根拠として活用するとしている。
厚労省は、9月15日の大阪協会の要請に対し「年末に向けて状況を精査し、経過措置を検討する」と応じるとともに、「地域に根付いて診療している医師を廃業に追い込むことは適切ではない」と言及した。
医療界で、原則義務化撤回、1人の廃業者も出さないとの声を広げていくことが必要だ。
補助金上回る契約は慎重対応を
「(ベンダーから)補助金額を上回る見積もりが提示された」、「すぐ契約しないと間に合わないと迫られた」などシステム業者からの強引な勧誘、多額の見積もりに関する相談が協会・医会、保団連に寄せられている。
システムベンダーから補助金上限を超過する見積もりが提示された場合には、契約は一旦保留し、慎重に検討することが重要だ。
医療機関守るため 抜本的な見直しを
保団連は、年末の再検討に向け、原則義務化の撤回とともに、少なくとも十分な経過措置や除外範囲を拡大することなど抜本的な見直しを求めていく。
そのため、システム契約や顔認証付きカードリーダーの申請は一旦様子見することを推奨する。自院の特性に照らして導入する必要性が低い、導入・対応が難しい場合などはより慎重な対応を求めたい。
保団連は地域の全ての医療機関を守るため、原則義務化撤回を求める署名に取り組むとともに、全国の現場の声を集め、政府への要請を強めていく。