医療費削減目的のリフィル処方- 医科改定をどう見るか

2度目のコロナ禍で実施された2022年診療報酬改定をどう見みるか、全3回で掲載する。最終回はリフィル処方について取り上げる。

中医協の審議飛び越え突然の導入

2022年改定前年の21年12月22日の予算大臣折衝で、「リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進による効率化」が中医協(中央社会保険医療協議会)の審議を飛び越えて突然導入され、①導入・活用促進により診療報酬削減(マイナス0・10%)、②薬剤師との連携(薬剤師の権限強化)、③再診の効率化(受診回数減による医療費削減)の3つの目的が掲げられた。
財務省側からの医療費削減圧力によって導入されたことは、明らかである。

「長期Do処方」がターゲットに

6月に閣議決定された骨太の方針2022では、「リフィル処方箋の普及・定着の仕組みの整備」が盛り込まれた。それと軌を一にして4月と5月に相次いで開催された経済財政諮問会議、財政制度審議会では、「患者側の希望を確認・尊重する形で促進」、「保険者へのインセンティブ措置(国保の保険者努力支援制度や後期高齢者支援金の加減算など)も活用」などと一気に促進を図るべきと提言するとともに、主に長期にわたり同じ内容の処方が続いている場合を「長期Do処方」として問題視し、とりわけ40歳以上で高血圧症、糖尿病、高脂血症の疾患がDo処方の上位を占めている点を強調している。保険者から組合員等への働きかけが、強まってくると思われる。
一方で、「患者の症状によってではなく医療機関としてリフィル処方に対応しない方針を掲げている事例」や「処方箋のリフィル可欄に患者への特段の説明や患者の同意がなく打ち消し線が入っている事例」等を問題視している。今後、患者からリフィル処方の要望などが増えてくることが予想される。

3割の薬局で受付実績

日本保険薬局協会(NPhA)が5月末から6月初めにかけて行った自団体の会員対象の調査(103社、1万1881薬局が回答)では、改定から約2カ月の間でリフィル処方箋の受付実績がある薬局は17・6%と発表している。その後9月に発表した4~6月の3カ月間の状況に関する調査結果では「期間中にリフィル処方箋を1枚でも応需した薬局」は28・0%と報告(3548薬局が回答)しており、まだ数は少ないものの徐々に増えてきている。
調査時期は花粉症などアレルギー疾患が増える時期と重なっており、耳鼻科、内科、皮膚科等で処方するケースが比較的多かったようである。
医療機関から患者にリフィルを提案するケースもあったと報告されている一方、患者からの要望によってリフィル処方箋発行がされるケースも多かったようだ。

医師の「予見できる範囲」で

保団連は、リフィル処方箋の使用を想定する慢性疾患の患者は感染症・合併症の兆候や重篤疾患の初期症状等、微細な容態変化への迅速な認識や的確な対処が不可欠であり、医師の診察を事実上薬局(薬剤師)に委ねる形となるリフィル処方箋の導入は、患者の健康確保上から極めて問題が多いことから反対を表明している。
また、あくまで医師が総投薬期間を判断するものの、受診なく来局(2度目以降の処方)した患者について、薬剤師(薬局)が「服薬状況等の確認」を行い調剤の可否を事実上判断することとなるため、医師法の「無診察投薬」の禁止規定に抵触する疑いがあるのではないかとの指摘もある。
療養担当規則で投薬は、あくまでも「予見することができる必要期間に従ったものでなければならない」とされており、医師の責任の下に判断し処方するものである。
この点を念頭に、患者からの要望があった場合でも、しっかりと判断し処方することが重要である。