政府は、2023年4月に向けてマイナンバーカードの保険証利用などオンライン資格確認導入の原則義務化を進めている。問題点を連載で解説する。第5回は、整備コストについて考える。
補助金超過見積、追加費用発生も
オンライン資格確認を行うには一連の機器整備が必要となる。医療機関のシステム状況に応じて異なるが、標準的装備として、▽顔認証付きカードリーダー▽オンライン資格確認用端末(パソコン)▽オンライン請求回線の整備▽レセプトコンピュータ改修、また医療情報の閲覧を行う場合は▽電子カルテシステム等の改修―などが求められる。
支払基金の案内サイトでは、システム導入費用として27・8万円~70・2万円の「目安」を示し、「補助金の限度額の範囲内に必ず収まるわけではない」ことに注意を促している。
診療所の補助金限度額は42・9万円(上乗せ後)だが、中には 180万~200万円の見積もりも報告されているなど注意が必要だ。実際にある小児科医院にベンダーが案内しているものでは、導入費用は最低60万円で補助金上限を17万円超過している(表)。別途、維持費が毎月8800円発生した上、処方箋情報閲覧など念頭に今後予定されるサービスについては追加の費用が求められる。
加算算定には注意
運用コスト(常時接続、保守点検やシステム更新など)は補助金の対象外であり、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を算定し賄う形となる。当該加算は、初診で算定し、保険証で受診した患者は4点(加算1)、マイナンバーカードで受診して医療情報閲覧に同意した場合などは2点(加算2)を加算する。
運用費が上記事例のように月8800円の場合、週2日休診として、全ての初診で加算1を算定するケースでは、月8800円を賄うには1日10人以上の初診が必要となる。外来に占める初診患者数が15%の場合、1日67人の診療が求められる。当然、加算2を算定する患者も出てくるため、実際には1日70人以上の診療が必要となる。相当に高いハードルだ。
また、加算算定に当たっては、▽オンライン請求の実施▽医療情報閲覧機能の実装、さらに▽国が示した「問診票」の標準的項目に沿った聴き取りを行うこと―なども求められる。国がマイナンバーカードでの受診を促す一方、オンライン資格確認を導入した医療機関ではかえって窓口負担が高くなるため、患者とのトラブルも懸念される。
医療機関に応じてメリット・デメリットが異なるオンライン資格確認の導入を義務化した上、医療機関と患者に負担増を求めることは不条理と言わざるを得ない。