中医協では2023年4月に向けてマイナンバーカードの保険証利用などオンライン資格確認導入の原則義務化に向けて議論が進む。問題点を連載で解説する。第6回は、高齢医師・閉院予定者の問題について考える。(随時掲載)
閉院検討が1割
現在、中医協では、電子レセプト請求(オンライン、光ディスク)する医療機関にシステム導入を義務付けるとしている。保団連には「あと数年で閉院予定だが、来年3月末までに対応しないといけないのか・対応は難しい」などの相談が多く寄せられている。中医協では、年末に導入状況を調査して、「地域医療に支障を生じる」など「やむを得ない場合の必要な対応」について検討するとしているが、現時点では、閉院予定や高齢の場合も電子レセプト請求をしていれば義務化対象となる。
このまま義務化された場合、「閉院することも考える」と回答する医療機関が1割にのぼり、そのうち60歳以上が75%を占める(神奈川協会調査7月実施)。資格確認の機器・設備に対応できないことを理由に、地域を熟知した医師・歯科医師を失うことは不合理極まりないばかりか、地域の患者にとっても大きな損失である。
こうした中、日本歯科医師会は60歳以上の会員を対象に「高齢のため数年後に廃院予定」「レセプト請求件数が少なくオンライン資格確認を活用できない」など対応が困難な事例などについて調査に乗り出している。また、日本医師会の長島公之常任理事は、「閉院予定や医師の高齢化など、必ずしも医療機関側の責任とは言えない『やむを得ない』理由で導入できない場合には、経過措置の設定などが必要だ」と述べている(メディファクス10月4日付)。
保団連の要請に対しても、厚労省担当者は「閉院、廃業は避けなければならない」との認識を示している。少なくとも、高齢、閉院予定者は確実に義務化から除外させていくことが必要だ。
閉院で補助金返還
オンライン資格確認の導入に際しては、大半の医療機関は支払基金から補助金を受けて整備を進めている。支払基金の案内サイト(よくある問い合わせ(FAQ))では、例えば、導入2年後に廃院となり、支払基金にオンライン資格確認機器を処分する手続きを行う場合、顔認証付きカードリーダーや補助金で購入した資格確認用端末の機器等について、未使用分(減価償却の残存年数)に相当する金額を返納するとしている。例えば、顔認証付きカードリーダーであれば、その商品価値は約10万円、減価償却期間は5年より、2年使用で廃院した場合、残り3年分に相当する金額(約6万円)の返還となる。
義務化により高齢医師等の廃院・廃業を加速させる一方、導入した場合は閉院時に補助金代分の返還が求められることは理不尽と言わざるを得ない。補助金返還の免除が求められる。