10月27日の参議院厚生労働委員会では、前日の衆議院委員会と同様、保険証廃止・オンライン資格確認義務化をめぐり質問が相次ぎました。各協会・医会からの議員要請が国会での質疑につながっています。保険証廃止に質問が集中する中、オンライン資格確認の義務化をめぐり、賛否両論からの質問が見られます。26、27日の質問の模様を伝えます。
国民の疑問に答えないと理解は得られない 大西議員(立憲)
26日の衆議院厚生労働委員会で、 大西健介衆議院議員(立憲民主党)は「マイナンバーカード活用はわかるが、2年(で保険証廃止は)はあまりに急な話で国民に不安が広がっている」として政府の対応方針を質しました。まず大西議員は、義務化を免除されている紙レセプトの医療機関、今後対応を検討する柔整や、あんま・はり・きゅうなどの施設について質問。加藤勝信厚労大臣は「資格確認に特化した仕組みを開発する」としました。
また、大西議員は、「遠足や修学旅行の際に学校では保険証をコピーするが、代わりにマイナカードを預かるのか」と質問。伊原和人保険局長は「関係部署と検討して丁寧に回答していく」としました。「マイナンバーカードが手元にない人は、(報道によれば)お金を払うと保険証が交付される形となるのか」との質問に対しても、加藤厚労大臣は「具体的な制度設計・運用を含めて丁寧に検討していく」と繰り返すなど見切り発車が改めて浮き彫りになっています。「紙の保険証は残るのか」との追及にも、加藤厚労大臣は「マイナンバーカードが手元にない様々なケースがあり、それぞれのケースに応じた対応が求められるため、(具体的には)答えられない」との答弁に終始しました。大西議員は、「今日のような国民の素朴な疑問に早く答えを出していかないと、保険証廃止に理解は得られない」としました。
「丁寧な説明・対応」を強調 神谷議員(自民)、窪田議員(公明)
27日の参議院厚生労働委員会において、 神谷政幸参議院議員(自民党、薬剤師)は、「オンライン資格確認整備が最も進んでいる薬局でも、保険証廃止会見に大混乱している。『高齢者をはじめとして対応できるのか』『カードがない患者への医療提供に差が出ないのか』など漠然とした不安が聞かれる」として、丁寧な説明・対応を求めました。
窪田哲也参議院議員(公明党)は、「高齢者、乳児のカード取得や紛失などの対応について丁寧な取組が必要」と指摘。特に「カード未取得者への医療保障の対応については、様々なケースを具体的に丁寧に検討してほしい」と求めました。また、「来年2月末までのベンダー契約の期限(≒補助金上乗せ措置)について柔軟な対応をしてほしい」との求めに対して、伊原和人厚労省保険局長は「医療関係者からは『経過措置が必要』との声も多い。年末に中医協で『必要な対応』について検討する」と応じました。
「100%整備すべき」 東議員(維新)
東徹参議院議員(維新の会)は、「河野大臣の『24年秋の保険証廃止』は評価する」とした上で、「23年4月以降もオンライン資格確認の体制整備は進めるべき」として、「診療報酬の減算は考えているのか」と質問。伊原保険局長は、「義務化対象となる医療機関の9割がカードリーダーを申し込んでおり、23年4月に向けて、その運用開始が課題」として、「ベンダー事業者の体制強化を進めている」と述べ、診療報酬の運用には回答を避けました。また、「中医協で年末に再検討を行う」とはしたものの、まずは「9割の医療機関へのシステム改修を整えたい」とシステム導入推進を優先していく姿勢を強調しました。東議員は「義務化なので100%で整備すべき」と念押ししました。
医療機関は非協力、補助金中止すべき 田村議員(国民)
田村まみ参議院議員(国民民主党)は、「オンライン資格確認を導入しない理由は『マイナ利用者が少ないから』『導入費用が高額』と聞くが、2年かけて準備してきた中、『義務化』を契機にして導入が進んでいる。はっきり言えば、医療機関はオンライン資格確認に非協力的と見える」と指摘。さらに田村議員は、「デジタル化が進み国民がマイナカードを持つ中で、それで受診できないとなれば、そうした医療機関は淘汰されるべきものとも一方で考えられる」などとして、「整備を拒む医療機関に対して長期の財政的支援はやめるべきではないか」と求めました。また、「マイナカード機能のスマホ搭載がされていくが、新たな読み取り可能な簡便な機器が出てくると考えて、医療現場でカードリーダー整備が進まなくなる事態が懸念される。無用な財政支援金が続き、無用なカードリーダーがあふれるのではないか」と述べました。
保険証廃止は「禁じ手」 倉林議員(共産)
倉林明子参議院議員(共産党、看護師)は、マイナカードがない人が公的医療を受ける際の制度的対応について「有料発行をはじめ何がどう変わるのか具体的に説明してほしい」と質問。加藤厚労大臣は「具体的な検討をしている」と繰り返しました。倉林議員は「保険料を支払っているのに、(保険証の)有料発行はペナルティであり断じてすべきではない」と強調しました。また、保険証廃止には反対だが、本来「具体的な制度的対応が十分に準備された上で国民に説明すべきだが、議論の進め方としても乱暴」としました。倉林議員は「マイナカード普及ありきで国民の命綱を担保に取るようなことはやってはならない禁じ手だ」と強調しました。
トラブル網羅的な把握せず 厚労省
オンライン資格確認システムに関わって、倉林議員は、「運用開始した診療所では1日数件の利用があるかないかでも、トラブルも少なくない」と厚労省に状況認識を質しました。伊原保険局長は「トラブルは網羅的に把握していない」と断った上で、支払基金コールセンターにおける照会状況(8~10月)に拠りつつ、導入方法・セットアップ設定などの相談件数を紹介するとともに、「三師会合同のオンライン資格確認推進協議会を通じて現場の声を聴いている」と述べて、運用現場の具体的状況については触れませんでした。システム導入ありきの無責任な姿勢が改めて浮き彫りになっています。
トラブル3割、閉院1割 保団連調査
倉林議員は、保団連調査結果を紹介し、「運用開始した医療機関の3割においてトラブルが発生している。登録データ・更新の遅れなどで『明らかに資格があるのに無効と返信された』、『機器動作が遅くなった・止まった』などが報告されている」と指摘。「閉院・廃業の回答も1割程度にのぼる」として、「オンライン資格確認ができないとの理由で指定医を取り消すなどはあってはならない」と求めました。加藤厚労大臣は、「中医協答申に沿って年末に検討する」と従前の手続きを述べ、「違反内容にとっては取消事由となる。直ちに指定取消ではなく丁寧な指導を行う、具体的には個別事案ごとに判断する」と従前の見解を繰り返しました。
倉林議員は「かかりつけ医や発熱外来を増やそうという時に廃業を促すことは矛盾している。システム運用の安定性の根幹にも支障を来している」などとして、「療養担当規則の再改正が必要」と求めました。伊原保険局長は、加藤大臣同様に「中医協答申書に沿って進める形で医療現場の理解を得ながら進めていく」と応じました。倉林議員は「不完全な制度、マイナ保険証も進まない、地域医療への影響も避けられない。期限ありき、療養担当規則の罰則付きの強硬はやめるべき」と改めて強調しました。