【談話】高齢者狙い撃ちの負担増に強く抗議する~医療保険制度改革取りまとめについて~

全国保険医団体連合会では、12月15日に社会保障審議会(医療保険部会)で医療保険制度改革に関する「議論の整理」を取りまとめたことを踏まえ、下記の談話をマスコミ各社に発表しました。[PDF:213KB]

2022年12月21日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

高齢者狙い撃ちの負担増に強く抗議する

~医療保険制度改革取りまとめについて~

 

厚労省の社会保障審議会(医療保険部会)は12月15日、2023年通常国会への法案提出に向けて医療保険制度改革に関する「議論の整理」を取りまとめた。翌16日、「議論の整理」の内容を盛り込んだ全世代型社会保障構築会議報告書を受けて、岸田文雄首相は医療保険制度改革等にむけて速やかに法案作成作業を進めるよう厚労省に指示した。

 

「議論の整理」は、「医療保険制度の持続可能性を確保する」ため、「全ての世代で増加する医療費を公平に支え合う仕組みを強化する」などとして、高齢者を狙い撃ちしつつ、相対的に所得が高い勤労者に保険料負担増を強いる一方、国費(税金)投入を大幅に引き下げるものである。国民皆保険制度を国是とする我が国において、国の財政責任を更に後退させるものであり、到底認められるものではない。

 

後期高齢者4割で負担増

後期高齢者の保険料について、後期高齢者と現役世代の支援金の伸び率(1人当たり)が同じになるように見直した上、高齢者内の「能力に応じた負担を強化する」として所得割の比率を引き上げる。年収153万円以上の中低所得者から保険料負担増となり、後期高齢者の4割が該当する。

出産育児一時金について50万円に引き上げる一方、財源は、現役世代(74歳以下)が加入する保険料の上乗せに加えて、新たに後期高齢者が一時金全体(公費除く)の7%分を負担する形にする。全世代型社会保障構築会議報告書では、少子化対策は「極めて価値の大きい社会保障対策」と強調しつつも、国費の抜本的投入には背を向けた上、〝孫子への支援〟を引き合いに、低年金・低所得者が多い後期高齢者に負担増を強いることはフェアなやり方とは言い難い。社会への将来投資として、国費投入が検討されるべきである。
全体の制度改定を通じて、後期高齢者1人当たり平均で保険料は年5,200円増(2025年度)と試算される。別途、高齢化等に伴う保険料・年4,300円増(2024・25年度)の上乗せが予定されるため、1人当たり・計1万円近い負担増となる。保険料負担増は年収200万円で年8,500円、年収400万円で25,600円と見込まれる。年金が目減りし物価高騰などで高齢者が生活費を極限まで切り詰める中、窓口負担増、保険料増、更には「保険証廃止」などあらゆる手段を使い、受診抑制を強いる国の姿勢には憤りを禁じえない。

 

保険料肩代わりで国費削減

また、各保険者間で負担している65~74歳の医療費負担(前期高齢者納付金)について、被用者保険間においては「報酬水準」 に応じた負担調整を3分の1範囲で導入する。比較的報酬が高い勤労者の負担増となる。協会けんぽの財政負担は軽減されるものの、協会けんぽへの国庫補助の廃止等による国費削減額(▲1,290億円)も加味すれば、協会けんぽの保険料への影響額は320億円の負担増となる。
大企業の内部留保は過去最高を更新する一方 、貧困・格差は深刻な状況が続く。高齢者、勤労者の保険料増ではなく、大企業・富裕層に応分な負担を求め、公正な税財政を再建し、国庫補助を抜本的に引き上げて医療・社会保障を拡充させることを強く求めるものである。

以上