オンライン資格確認義務化 経過措置は抜本改善を
運用開始3割 猶予延長は不可避
中医協で答申された経過措置は、地域医療等に重大な支障が生じるなどやむを得ない事情を対象としている。しかし、システム整備や保険証廃止方針を背景に、経過措置の対象範囲や期間は限定的である。抜本的な改善を求めて保団連が厚労大臣に提出した要望書について報告する。
保団連が要望書を提出
システム整備が遅れている医療機関等への猶予期限が2023年3月末から同年9月末まで延長された。半導体不足や複雑な回線整備に対応するシステムベンダー、知識、経験、人材不足や、コロナ禍での多忙等から昨年12月18日時点で運用を開始した医科診療所は27・4%、歯科診療所は30・0%に過ぎない。保団連調査でも3月末までの導入見通しが立たない医療機関が半数に及んでおり、わずか半年の延長でシステム整備が完了するという保障は何ら存在しない。また、システム導入済みの医療機関の4割でトラブルが生じており、トラブルの原因究明と解消策が示されるまで義務化実施を大幅に延期すべきだ。
回線敷設に多額費用、経過措置適用を
オンライン資格確認に接続可能な光回線ネットワーク環境(IP-VPN等)が整備されていない保険医療機関・薬局について、当該施設に接続環境が整備されるまで猶予された。
これに関しては、例えば、▽テナント開業の医療機関の場合▽建物所有者が光回線の敷設工事等を許可しない場合や建物内の医療機関所在スペースまで回線敷設が物理的・経済的に困難な場合▽自身が所有する建物等でも施設の老朽化等で回線敷設工事に多額の資金を要する場合―など、さまざまなケースが存在する。個々の医療機関の実情に応じて柔軟に経過措置を適用することを求めた。
「高齢」「レセプト件数」は別要件に
その他、特に困難な事情による猶予対象とされた医療機関は、限定的な取り扱いとなった。厚労省は、「その他特に困難な事情」の目安として常勤医師等が高齢であって、月平均レセプト件数が 50件以下である場合とし、「高齢」の定義について「一般に70歳以上であれば高齢と判断する。65
歳から69歳は医療機関等の状況等を踏まえて個別に判断する」との考えを示した。
レセプト件数の取り扱いが少ない医療機関について、厚労省が提示した資料では、月平均約50件以下(1日のレセプト件数が2~3件)の対象医療機関数は、全体の 4・5%(医科で 3・4%、歯科で 7・5%、調剤で 3・2%)と極めて限定的である。
厚労省が提示した資料には、年齢別のレセプト平均件数が明示されておらず、「年齢」と「レセプト件数」は別要件とすべきだ。また、コロナ禍で経営困難を抱える医療機関は年齢に限らず増加している。経営困難を抱える医療機関にとって、新たな設備投資は困難である。個々の経営状況も踏まえて猶予対象を個別に認めるべきだ。
数年後の閉院・廃院計画でも受付を
閉院・廃院予定などの医療機関への猶予措置の期間は遅くとも24年秋までと限定された。これは、政府が24年秋までに保険証廃止を目指すとした方針を受けたものである。同要件での猶予申請の受付を「24年秋までの廃止・休止を決めている施設」に限定する運用が想定されているのは極めて不当である。
医療現場の現実や実態を踏まえず、オン資義務化で閉院・廃院を検討せざるを得なくなった医療機関に1年以内での閉院・廃院を迫るものであり、期限を撤回するとともに、「数年後に閉院・廃院の計画」での猶予申請も受け付けるべきだ。