【主張】「原発回帰」方針は撤回し、暮らし・地域の再建を

【主張】「原発回帰」方針は撤回し、暮らし・地域の再建を

 政府は2月10日、「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で今後10年間の工程などを取りまとめた脱炭素社会のための基本方針を閣議決定した。基本方針は今国会へ関連5法の束ね法案で提出し、成立を目指している。
基本方針では、「核のごみ」問題の「最終処分場」を「政府の責任」で自治体が調査を受け入れる前に政府から検討を申し入れる方針を決定した他、①将来にわたり原子力を活用する②新規の原発について開発・建設に取り組む。まずは廃止決定した原発の敷地を対象に具体化を進める③既存原発を可能な限り活用するとして、「原則40年、最長60年」と定めた現行ルールを変更して、審査などで停止した期間を除く等、老朽原発の運転延長を決めた。
③では、原子力規制委員会の石渡委員から「運転期間を法律から落とすことになる。安全側への改変とは言えない」「審査の期間が延びると、より高経年化した炉を将来動かすことになる」と反対したが、異例の多数決で採決された。運転期間の制限は、経産省所管の電気事業法に移管する方針だ。
予算面では、新規国債の「GX経済移行債」の発行で、22年度補正予算と23年度予算案で合計1・6兆円を投じ、将来的に20兆円を調達するとしている。
無責任な「原発回帰」の方針は決定方法も、原発への科学的知見や事故の教訓を踏ふまえないなど、どの点からも日本の進路を誤らせるものだ。
11年3月11日19時3分に発せられた「原子力緊急事態宣言」は未だに解除されていない。事故も収束していない。被害者が失ったものは膨大で、今も増え続けている。帰還困難区域、原発事故で避難を命じられた福島県の12市町村では事故前と比べて半分以上の人が戻っていない。関連死は2千人を超えており、いまだに多数の方が避難を続け、ふるさとと生業を奪われている。
にもかかわらず、政府は、被災者への責任を負わないどころか、復興特別所得税の軍事費への流用、この春から夏に原発汚染水(ALPS処理水)の海洋放出を閣議決定した。
「原発回帰」の方針を撤回させ、国と東電が、事故収束・廃炉はもちろん、暮らし、地域の再建の責任を果たし、復興の取り組みに全力を尽くさせよう。