竹田副会長が参考人質疑で意見陳述 参議院地方デジタル特別委員会(5月17日)

参議院の特別委員会で5月17日、マイナンバー法改正案について参考人質疑が行われ、保団連の竹田智雄副会長が意見陳述した。長年、地域医療を支えた医療機関が閉院・廃院に追い込まれていることや、オンライン資格確認の運用を開始した医療機関の多くでトラブルが発生したことなど、保団連や各協会の調査で明らかになった医療・介護現場の実態を報告し、保険証廃止撤回を訴えた。

「医療崩壊が加速」議場静まり返る

竹田副会長は、保団連・協会の調査結果や、2023年3月だけで廃止の届け出をした医科・歯科保険医療機関が1103件に上ることを示し、「地域医療崩壊を加速させている」と指摘。自身が相談を受けた歯科クリニック閉院のエピソードに、議場は静まり返った。
また、3月にオンライン資格確認システムを利用した1億1804万件のうち、マイナ保険証を利用したのはわずか2・3%(約267万件)で、「オンラインでの資格確認においてマイナ保険証は必要ない、というのが医療現場の実感だ」と訴えた。昨年11月の保団連調査では、運用を開始した医療機関の4割でトラブルが発生し、4月以降に行われた大阪協会の調査でも、誤った資格情報が登録されていた複数の事例や、双子が同一人物として登録されていたケースなど、半数以上の医療機関がトラブルを経験したことを報告。「現行の健康保険証では起こりえないトラブルであり、診療継続に支障を来している」と、保険証廃止に対する現場の不安を訴えた。

「犯罪の温床に」

マイナカードの公的個人認証サービスは、銀行・証券口座開設やローン契約などの民間サービスにも利用できる。高齢者施設の多くで受診のために利用者の保険証を預かっているが、保団連が4月に行った調査では、暗証番号の管理を含め紛失責任が重いため、回答した高齢者施設の約94%が「マイナンバーカードを管理できない」と答えている。「実印と印鑑証明、銀行印の機能も備えたマイナカードを、自己で管理できない人に無理やり持たせればどうなるか。犯罪の温床になることは明らかだ」と指摘。
この日の朝にも自身が嘱託医を務める高齢者施設で搬送指示をしてきたことを紹介し、「介護施設では2・5日に1回は受診する。保険証なら預かることができ、迅速に医療にかかることができる」と話すと、与党議員らも深くうなずいていた。
改正法案については、保険者に健康保険証の発行・交付が義務付けられている現状から、任意取得が原則のマイナカードによる電子資格確認が原則となることについて、「無保険扱いとなる人を政策的に生み出すもので、国民に大きな不利益をもたらす」と指摘し、「国民皆保険制度を守るために、健康保険証の廃止を含むマイナンバー法等の撤回を求める」と主張した。