【声明】厚労省発表「他人情報紐づけ60件」は氷山の一角 全件チェック・全容解明まで運用停止を求めます

厚労省発表「他人情報紐づけ60件」は氷山の一角 全件チェック・全容解明まで運用停止を求めます

全国保険医団体連合会では、厚労省の発表で新たに「他人情報の紐づけ」が60件あったことに対し、下記の声明をマスコミ各社に提出しました。

2023年6月13日

厚労省発表「他人情報紐づけ60件」は氷山の一角
全件チェック・全容解明まで運用停止を求めます

全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇

情報の流出の削除・回収はほぼ困難に

加藤勝信厚労大臣は13日、閣議後会見で「他人の医療情報に誤って紐づけられていた事案が昨年12月から5月22日まで新たに60件発生し、その内4件で受診歴や薬剤情報など閲覧された」と公表しました。
他人の医療情報が紐づけられた場合、機微性の高い医療情報がマイナポータル上で閲覧でき、閲覧画面をキャプチャーすれば容易に外部流出させることも可能です。医療情報などがウェブ上に流出すれば削除・回収がほぼ不可能となります。しかも、保険組合調査で判明した60件は、いずれも医療機関に受診歴・処方歴がある患者のセンシティブな情報です。
当会調査(6月8日集計)でも少なくとも26加盟団体で85件の誤紐づけが報告されており、今後も増加する可能性があります。厚労省公表数値も氷山の一角と言えます。
岸田首相は、21日に被保険者全員の「総点検」を指示したと国会答弁しましたが、「総点検」は第三者を入れた検証や調査方法の明示もありません。報告期限も目途も一切報告されていません。具体的な手立てもなく、国会で首相がやる気を示したにすぎません。これ以上の情報流出、プライバシー侵害を防ぐために直ちにマイナ保険証を利用するシステムの運用を停止すべきです。

重大医療事故にも直結しかねない

他人の薬剤・診療情報が閲覧可能な状況が続く中で、政府は、6月2日にデジタル改革工程表を策定しました。マイナ保険証・オンライン資格確認システムをインラフ基盤として、今後、電子カルテ・電子処方箋など医療情報や処方情報を標準化・データ共有等を図るとしています。投薬・治療情報の取り違えは、疾病の急性増悪、アナフィラキシーはじめ重大な医療事故につながりかねません。
岸田首相は12日の衆議院決算行政監視委員会で「さらなる医療の質向上に向けて健康保険証を廃止する」と答弁しましたが、他人に医療情報が閲覧された事案は、現行の健康保険証では起こりえないトラブルです。
さらに、他人の情報紐づけが完全に解消されない限り、医療者は、共有データの信憑性を疑わないといけなくなり、間違った処方など医療過誤など医療事故にもつながりかねません。岸田首相の言う「医療の質向上」とは真逆の事態を招きます。

本当に今後誤登録は生じないのか

河野太郎デジタル大臣は12日の参議院決算行政監視委員会で「6月1日改正厚労省令により、今後誤登録は生じない」と断言しました。
しかし、6月1日改正省令で事業者が従業員にマイナンバーの提出を求めたり、確認することが可能とされましたが、「被保険者によるマイナンバーの提出義務」は存在しません。根拠のない答弁であり、報道機関を通じて国民の間違ったメッセージが伝わりかねません。
マイナンバーの紐づけは被保険者が転職・退職、結婚、出産など人生のライフステージに伴い、加入する保険者や加入形 態が切り替わる毎に発生しうるトラブルです。
3400の保険組合が人的に介在するシステムで常に発生しうることを想定した対策が必要です。少なくとも全被保険者のマイナンバー紐づけを全件チェックするまでマイナ保険証を利用するシステムを運用停止することを強く求めます。