「総点検・中間報告」を総点検する

「総点検・中間報告」を総点検する

 

 

この間の厚労省の対応

5月23日に厚労省は、全保険者に対して総点検を要請した。

要請では、J-LIS照会によって個人番号を取得する際、3情報(カナ氏名、性別、生年月日)のみが一致することをもって個人番号を取得・登録するなど、同省が示している基本的な留意事項とは異なる方法で事務処理をしていなかったかの点検を求めている。

 

資料)厚労省 5月23日「オンライン資格確認等システムにおける正確な資格情報等の登録について」の一部改正について

https://hodanren.doc-net.or.jp/wp-content/uploads/2019/09/b2af8686cb2e9cc89d50dfa641c8db38.pdf

 

しかし、6月末中間報告を7月4日加藤厚労大臣会見では、医療保険におけるマイナンバー誤紐づけ点検・報告の対象は1300団体に限定された。データ点検を行う団体に対しては、漢字氏名、カナ氏名、生年月日、性別、住所の一致などの確認し7月末までにデータ点検結果が報告されることとなった。

資料)加藤厚労大臣記者会見 7圧4日

https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00570.html

 

理由は、厚労省が示す留意事項に沿っていなかったもしくは確認できない部分がある団体(下記①、②は被用者保険、協会けんぽが該当)が主な報告対象となる。市町村国保、後期高齢者医療は住民基本台帳データを保持しており、下記③分類されるため報告対象とならない。

 

<点検・チェックの分類>

3,411団体ある全医療保険者のうち

  • 基本的な留意事項に沿った対応を行っていなかった等のためデータ点検を行う旨を回答した保険者は293団体、全体の約8.6%
  • 基本的な留意事項に沿った事務処理を行ってきたが確認できない部分等もあるため登録データの点検を行う旨を回答した保険者が1,010団体、約29.6%。
  • 基本的な留意事項に沿った対応を行っている旨を回答した保険者が2,108団体、約61.8%

1303団体の点検報告のみ 点検対象も限定的

点検・報告事案は、3411ある保険組合の内、最大で1303団体の点検・チェックに限られる。また、当該団体所属の被保険者全員ではなく、3情報でJ-LIS紹介をかけたケース、事業主からマイナンバーの申請なかったケース等に限定されている。

 

点検・チェックの対象は?

 

では、過去に登録した加入者の資格情報等の点検・修正の依頼とは何か?

5月23日の厚労省通知では、点検対象は以下の内容とされている。

 

3情報(カナ氏名・性別・生年月日)以下でマイナンバー登録したもの

 

地方公共団体情報システム機構(J-LIS)への照会(以下「J-LIS 照会」という。)により加入者の個人番号を取得・登録したが、カナ氏名又は漢字氏名、生年月日、性別の3情報以下により照会し、適切な確認を行わずに当該個人番号を取得・登録したもの(資格喪失者を含む)

 

複数候補が表示され登録したもの

 

J-LIS 照会結果に複数の個人番号が表示された場合に一律に一定のデータを取り込む仕様により、複数候補の中から個人番号を取得・登録したもの

 

チェック機能を確認しなかった

中間サーバーにおける個人番号誤入力チェック機能により検知された不一致事例として各保険者等に通知されたものについて、適切な確認作業を行わなかったもの

 

点検・修正作業とは?

 

○中間サーバーに登録した個人番号により J-LIS 照会した上で、照会結果の5情報(漢字氏名、カナ氏名、生年月日、性別、住所)が加入者本人の5情報と一致することを確認する

 

○上記により確認できないものについては、事業主等に加入者本人の個人番号を確認できる資料(マイナンバーカードの写しや個人番号が記載された住民票の写し)の提供を求める等の方法により、正しい個人番号が登録されていることを点検する。

 

誤登録と情報漏洩への対応

 

○異なる個人番号が登録されている疑いが高いことが検知された際、実施機関は直ちにオンライン資格確認等システム上の当該個人番号に紐づく情報を閲覧停止とし、医療機関等がデータを閲覧できないようにする。

○オンライン資格確認等システムへの連携有無にかかわらず、異なる個人番号が登録されていることが検知された場合、事実関係の確認する

○異なる個人番号に紐づく「資格情報」「特定疾病療養受療証情報」「医療情報(薬剤情報、特定健診等情報及び診療情報)」「医療費通知情報」の第三者(医療機関・薬局、他保険者等、その他の第三者)による閲覧の有無を確認する

○第三者に閲覧された場合、保険者等は報告する。

○第三者の閲覧が確認されなかった場合、報告は不要

○厚生労働省は、異なる個人番号の登録が判明した事案の件数等を定期的に公表する。

 

点検・チェックの問題点・課題

 

5情報が完全一致するケースはほぼない

最終的には目視確認や本人への確認が必要

 

保険者に求められている総点検では、3情報(カナ氏名・性別・生年月日)以下で取得した個人番号については、5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)で検索することが求められている。その際、漢字氏名や住所に「●」がある場合やカナ氏名の一部に表記ゆれがある場合、住所について番地等の表記方法(例:1-2-2と1丁目2番地2号など)が異なる場合であっても、他の情報が完全一致しており、実態として同一の氏名や住所を指していることが明らかである場合は、これを一致するものとして取り扱ってよいが、その場合も本人への確認を併せて行うことが望ましいこと、としている。

5月23日の厚労省通知では、中間サーバーに登録した個人番号によりJ-LIS照会を実施した上で、照会結果の5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)が加入者本人の5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)と一致することを確認すると記載されている。

※確認方法は、当該の保険者が個人番号でJ-LIS照会で5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)を取得。取得した5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)と保険者が保有している5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)の一致を確認する作業となる。

各保険者が保有している漢字氏名や住所は住基ネットで保有している表記と異なる場合が多いため、検索時に5情報が完全一致するケースはほぼない。このため、住基ネットの検索条件には、「完全一致・前方一致・部分一致」といった機能を備えている。

特に外国人の場合は、かな氏名の登録内容が住基と異なるケースが多くあります(住基に登録されていないケースもあり)。

そこで抽出された対象者(候補者)と、保険者で保有している情報を照合し、同一人物であることを特定していく作業となる。

5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)の完全一致が期待できないため、結局は保険者で目検(人の目で確認する)による作業が必要となる。

保険者で保有している住所が古い(住所変更の届出がない)場合、対象者が抽出されない可能性がある。その際は照会期間にある程度の幅(from-to)を持たせるか、本人に確認する必要がある。

 

2016年マイナンバー紐づけ問題

4情報、「あいまい検索」による誤登録は未解明

 

 多くの保険者は、2016年に加入者の個人番号を住基ネットから一括取得している。当時の仕様では、保険者で保有する4情報と住基の情報を照合し、該当するデータが見つかるまで「検索パターン」を変えて本人確認情報の検索を繰り返す仕様になっている。

当時、厚労省が示した「あいまい検索」で登録したケースが膨大に及ぶが総点検対象となっていない。ここで登録ミスがあったものについては、誤ったままになっている可能性を否定できない。

保険者ではかなり膨大な作業になること、最終的には目検チェックになるので、100%正確に登録するというのは難しい。

 

(参考)

7月28日加藤厚労大臣記者会見

https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00578.html

記者:

マイナ保険証の誤登録の問題で、紐付け時のルールが厳格化されましたが、弊社の保険者への取材では、特に住所などJ-LIS照会で5情報を完全に一致させることは難しく、今後はマイナンバーの提出がない限り紐付けをしないことを検討する声も上がっています。マイナンバーの提出が任意となっている中で、今後システムへの反映に時間がかかったりマイナ保険証では資格確認ができないなど、そういうケースが出てくることをどこまで想定されていますか。またどのような対応を検討しているかもお聞かせください。

大臣:

医療保険のオンライン資格確認については、保険者において新規に登録されるデータの正確性を担保するため、本年6月から事業主から保険者に提出する資格取得届における被保険者の個人番号等の記載義務を法令上明確化させていただきました。また、提出された資格取得届等に個人番号の記載がない場合は、その都度、事業主に個人番号の提出を依頼・督促し、その上でやむを得ずJ-LIS照会により個人番号を取得・登録する際には必ず、氏名、生年月日、性別、住所により照会を行い、それらの情報が一致しない場合は、その照会結果を取得せず本人への確認を行うこととして、保険者が誤ったデータを登録する余地がないよう改めたところです。また6月以降、新規加入者に係る資格取得届については、個人番号を含む必要な事項が記載されている場合、または氏名、生年月日、性別、住所が記載されている場合に限って、保険者は届出を受け付けることとしており、その他の場合については事業主に当該情報の記載を求めることとしております。こうした仕組みを通じて加入者のデータが迅速かつ正確に登録されるように努力していきたいと思っておりますし、オンライン資格確認や患者本人の医療情報に基づくより良い医療の提供に当たっては、そうした間違いのないデータは大前提になるわけです。厚生労働省としては引き続き保険者の方々とも連携しながら適切な対応を図っていきたいと考えております。