資格確認書の取扱いの見直しだけでは医療現場のトラブルは解決しない

資格確認書の取扱いの見直しだけでは医療現場のトラブルは解決しない

「不安払拭」というのであれば現行の健康保険証の存続を

2023年8月4日

全国保険医団体連合会

会長 住江憲勇

 

岸田文雄首相は8月4日の記者会見において、2024年秋に現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化する方針について、資格確認書の取扱いを見直すこと等を表明しました。

マイナ保険証を持たない人に対し発行する資格確認書の取扱いについて、(1)当分の間、申請によらず交付、(2)マイナ保険証の利用登録の解除を可能にする、(3)有効期限を最長1年から最長5年に延長する、と説明されました。しかし、資格確認書の取扱い見直しだけでは、マイナ保険証によって引き起こされている現場のトラブルは解決しません。また、資格確認書を申請無しで交付するとされていますが、対象者がマイナ保険証を持たない人に限定されており、かつ「当分の間」の対応とされており、全被保険者に保険証を交付する現行の健康保険証の運用からは大きく後退します。改めて、現行の健康保険証の存続を強く求めます。

 

資格確認書の取扱い見直しでは「無保険扱い」の回避できない

現在、マイナ保険証によるオンライン資格確認でトラブルが生じ、被保険者情報が確認できない事態が多発する中で、健康保険証の券面を確認することによって「無保険扱い」を回避しています。資格確認書は原則としてマイナ保険証を持たない人を交付対象としているため、併用することができず、「無保険扱い」を回避する手段を失います。資格確認書の取扱い見直しだけでは、現在医療現場で起きているマイナ保険証によるトラブルは解決しません。トラブルの全容解明、再発防止が不確実な以上、現行の健康保険証の廃止はあり得ません。

 

「事務負担軽減」も疑問

 

マイナ保険証のメリットとして保険証発行等の事務負担軽減が上げられていますが、マイナンバーカードの発行実務、5年ごとの更新、さらに今回の資格確認書の発行・更新実務、情報の紐付け作業など、自治体、保険者の事務負担が本当に軽減されるのか、甚だ疑問です。加えて止まらないトラブルへの対応、「総点検」作業等で自治体や保険者の事務負担は増大しており、本末転倒です。

 

保険証を残せばよいだけ

 

資格確認書を使いやすくすることは、現行の健康保険証に限りなく近づけることに他なりません。であれば、すでに社会に定着し、安定的に運用されている現行の健康保険証を存続させれば良いはずです。

病気やケガの時にいつでもどこでも安心して医療が受けられるために健康保険証は不可欠です。改めて、来年秋の現行の健康保険証の廃止を撤回するよう強く求めます。