保団連女性部は医師・歯科医師の働き方改善を求めて9月22日に関係省庁に要請します。
9月22日(金)女性部省庁要請
会場:国会・参議院議員会館・B108会議室(地下1階)
省庁要請
14:00~ 文部科学省
14:30~ 厚生労働省
15:00~ こども家庭庁
内閣総理大臣 岸田文雄 殿
文部科学大臣 盛山正仁 殿
厚生労働大臣 武見敬三 殿
子ども家庭庁 加藤鮎子 殿
2023年9月22日
全国保険医団体連合会
女性部
部長 齊藤みち子
要請書
貴職におかれましては、連日行政の重責を果たされていますことに敬意を表します。全国保険医団体連合会(保団連)は、全国の医師・歯科医師約10万7000人で構成する団体です。当会女性部は2002年に結成され、女性医師・歯科医師の就労環境改善のための取り組みを続けてきました。女性医師・歯科医師の就労環境の改善は、男女ともに働きやすい医療界を実現し、安全・安心の医療の提供にもつながります。女性医師・歯科医師が能力を十分に発揮できる医療界にしていくため、以下の点についてご検討をお願いいたします。
医学部入試での女性差別をなくすために
2018年に明らかになった医学部入試での女性差別は、医師を志す女性を不当に差別しその努力を踏みにじるものです。性別を理由に医師への道が阻まれることがあってはなりません。文科省が20年12月に医学部の毎年の男女別合格率の公表を決めた後、21年度の医学部入試では、13年度以降で初めて女性の合格率(合格者数/受験者数)が男性を上回るなど、明らかにこれまでと異なる傾向が生じました。文科省が決めた男女別合格率の公表が、女性差別のない公正な入試の実施を後押ししていると考えられます。しかし、22年度は再び男性の合格率が女性を上回る結果となりました。入試差別の完全な解消や再発防止のために、今後も長期にわたって経年的にデータを注視する必要があります。また、点数の裁量の大きい論文試験や面接が「ブラックボックス」となって、女性差別が継続する可能性もあります。公正な医学部入試の実現に向けて引き続き文部科学省の役割発揮を求めるともに、以下の点を求めます。
(1)文科省が責任を持って、全医学部・医学科の入試の男女別の受験者数・合格率の調査と公表を継続すること
(2)調査結果の公表の際には、世論の関心を高めることで公正な入試の実施を後押しするため、引き続きスコミへのプレスリリースをすること
(3)点数調整をしやすい入試科目で差別的な得点調整が行われることのないよう、全医学部・医学科の受験者の科目ごと(筆記、面接、小論文など)の男女別の成績を調査し公表すること
二、性別にかかわらず人間らしく働ける環境を実現するための医学部定員増と財政的保障を
(1)医師数抑制策を改め、少なくともOECD平均に遜色のない医師数を確保するため、医師を増員すること
今年5月以降、新型コロナウイルスは5類に変更され、感染者数など把握がされなくなりました。しかし、まだまだ地域の第一線医療機関における感染拡大は予断を許さない状況です。引き続き、医療提供体制拡充の重要性が増しています。医師の働き方の観点からも医師数増は早急に行わなければなりません。2022年5月に甲南医療センターに勤務していた医師が過労自死し、労災認定されたことを受け、国に対し、病院に是正勧告して労働環境を改善させるよう求めたニュースは記憶に新しいかと思います。近年、厚労省も提唱する在宅療養が増加している傾向から、医師の労働時間や多職種連携のためのカンファレンスなど周辺業務も増加しています。体系的に課題を把握し、切れ目のない対策、また少なくともOECD平均に遜色のない医師数を確保するため、医師を増員することが必要です。今後の医療提供体制および医師が健康で働き続けられる環境を守るために早急に対応を求めます。
(2)画一的な歯科医師数抑制は見直すこと
歯科医療界では、長年「歯科医師数過剰」と言われ、歯科医師の養成数の削減などが進められてきました。この方向性は、必ずしも国民の歯科医療に対するニーズの議論からではなく、長年続く低歯科医療費という経済的政策のもとで、歯科医療機関の経営的な視点から導き出されたものです。近年、歯科医師の高齢化や地方の衰退などを背景に、このままでは、「全国どこでも」という歯科受診が危ぶまれ、国や厚労省は、改めて必要な歯科医師数を検討していると聞きます。歯科医師養成数は1970年代に大きく増加した後、80年代には既に抑制が行われてきました。そのため、現在の歯科医師の年齢構成は60代以上の比重が大きくなっており、このままでは中長期的な歯科医師数の減少、歯科医療供給量の減少は避けられないと危惧します。国民の歯および全身健康を守るために、歯科医療費の総枠拡大とともに、将来にわたる安定した歯科医師供給を求めます。
(3)結婚・妊娠・出産・子育て等のライフイベントとキャリア形成の両立が可能な専門医制度とすること
2022年4月より、育児・介護休業法が改正されました。厚労省・都道府県労働局雇用環境・均等部(室)の資料によりますと、「育児のための休暇・休業を希望していたが育児休業を取得できなかった」とする男性労働者が約4割いることなど休業取得の希望が十分かなっていない現状があるとのことです。資料には、法改正を契機として、職場環境の整備を進め、男女とも希望する労働者が希望する期間育児休業を取得できるよう取り組み推進を謳っています。医療界においても、固定的な性別役割分担意識や性別による画一的な働き方・休み方(女性は育児休業を取得して復帰後は短時間勤務で働く、子どもが体調不良になったらいつも女性が休む等)を解消し、医師・歯科医師が希望する働き方・休み方、キャリア形成ができる環境整備は喫緊の課題です。特に、専門医制度について、結婚・妊娠・出産・子育て等のライフイベントとキャリア形成の両立が可能となるよう、具体的な制度の改善を求めます。
三、国の責任で病児・病後児保育の充実を
開業医師・歯科医師は子どもが急に体調を崩しても休診にすることは難しく、私たちが行ったアンケートでは、病児・病後児保育拡充を求める声が非常に多くありました。
一方で、病児・病後児保育施設の経営は厳しく、2022年度の「病児保育事業の運営状況及び地域支援の取組に関する調査研究」でも6割以上が赤字になっており、医療機関併設型や病児対応型で、利用児童数が多い施設ほど赤字額が大きいという結果でした。医療機関併設型では利用者数に応じて保育士の配置を変更するといった対応はできず、病種が異なる場合は感染防止のために定員上限まで受け入れできない場合もあります。また、乳幼児や障害をもつ子どもを預かる場合は国の基準を超えて1対1で職員を配置しており、その際の人件費は施設や自治体の持ち出しになっています。同調査でも、基本分のさらなる増額や、定員に応じた設定を望む声が上がっていました。交付金の基準額見直しで、加算部分は200人単位から100人単位に細分化されましたが、わずかな人数の差により100万円単位で補助額が変わってしまい、不安定な状況は変わりません。同調査でも、施設運営が安定するようになったかという質問に対し、「どちらともいえない」42.3%で最多、次いで「そう思わない」16.6%で半数を超え、基本分のさらなる増額や、定員に応じた設定、加算のさらなる細分化や、50人未満の設定を望む声が上がっています。職員の処遇改善も喫緊の課題です。病児保育では、毎日違う子どもたちを保育し、病状もそれぞれ異なるため、高い力量が求められます。職員確保のため、6割以上の施設で賃上げ等を独自に行なっており、スキルアップについても各施設の自助努力に任されているのが実情です。病児保育は共働きやひとり親家庭にとっては「頼みの綱」であり、親の孤立を防ぐとともに、虐待防止の役割を持つとも言われます。安心して子どもを預けられる病児・病後児保育を確保するため、施設の安定的な運営と、職員の処遇改善、余裕ある人員配置を可能にする支援を充実させてください。
- 国の責任で病児・病後児保育を充実させること
- 病児保育に対する補助金を増額すること
- 病児保育に関わる保育士、看護師の処遇を改善すること