患者負担引き上げは避けるべき 入院食は治療の一環

異次元の物価高騰が医療現場を直撃している。特に30年間据え置かれてきた入院食設定額は赤字部門との悲鳴が強く、設定額の引き上げは急務である。

こうした中、入院食について患者の自己負担額を引き上げる方向と報道されている(共同通信、10月27日)。国が定める1食当たり原則460円を30円増で490円として、早ければ2024年6月の診療報酬改定より実施する案が有力だ。それまでのつなぎ(時限措置)として、医療機関には交付金などで1日当たり60円程度(1食20円相当)を支給すると報道されている。

 

平均120円赤字。20~30円引上げは焼け石に水

現在、医療機関が提供する入院食(届出)は、患者負担額(一般所得区分)460円に公的医療保険から給付180円を加えた640円で賄う。1日3食で計1920円の水準は事実上30年間据え置かれてきた。消費税3%から5%への増税に対応して20円増(1日分)したが、消費税8%、10%への引き上げに際しては何の手当もされていない。運営業者らでつくる日本メディカル給食協会の調査では、病院での必要経費は1日1人当たり平均2,280円に増え、国の設定金額(1920円)を超えて、360円が赤字(病院で持ち出し)となっている。とりわけ、小規模病院(50床未満)では、必要経費は3,305円に及んでいる。設定金額の引き上げは待ったなしだが、1食20~30円程度の引き上げでは焼石に水である。大幅な引き上げが不可欠である。

患者負担は200円連続引上げ

入院食の設定金額は長年据え置かれてき一方、患者負担額は2016、18年度に260円から360円、次いで460円に連続して引き上げられてきた。患者負担額は高額療養費の支給対象外であり、入院日数分だけ患者の懐を直撃する。入院に伴い収入は低下し、物価高騰も追い打ちをかける中、病人に追加負担を求めることは問題だ。そもそも、入院食は栄養管理や摂食上の工夫などがされ、治療の一環であり薬と同じ役割を果たしている。自分の好みで選んで食べる日常の食事とは全く異なる。皆保険制度を国是とする下、国が責任をもって費用補填すべきものだ。医療機関に赤字が出ないように入院食について公的医療保険からの給付金額を大幅に引き上げるとともに、患者が安心して入院医療を受けられるよう患者負担額は増やさないようにすることが求められる。

 

関連資料

【要望書】賃上げ対応と入院食に係る診療報酬の引き上げを求める – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)