9月のマイナ保険証利用率はわずか4.54%で、5か月連続で利用率が低下し続けています。これだけ不人気のマイナ保険証を何とか延命させるため、岸田政権は、補正予算でマイナ保険証の利用促進策を組み入れようとしています。診療報酬マイナス改定を主張し社会保障費の抑制を言い続けてきた財務省の財政制度等審議会が、なんと11月1日にマイナ保険証の利用促進策を打ち出しました。
<財政審のマイナ保険証利用促進策>
①患者の窓口負担の軽減策を検討する
②医療機関のマイナ保険証利用率に着目した評価を設定する
4.54%のマイナ保険証利用者だけ「患者負担軽減」は不公平
「利用者である国民にマイナ保険証のメリットを実感してもらう取り組みを強化」として、「患者の窓口負担の軽減策を検討する」としました。なぜマイナだけなのか?合理的な説明や根拠は一切ありません。
75歳以上の高齢者の医療費窓口負担が2割化され、厚労省調査でも受診抑制が明らかとなっています。長引く物価高騰や年金引き下げ等で食費・居住費の削減もとっくに限界を迎える中、いよいよ受診抑制で医療費支出も削減せざるを得ない状況に追い込まれています。こうした中、マイナ関連だけ国民の税金が大盤振る舞いされるのか、マイナ保険証を利用した人だけ窓口負担が軽減されるのか理解に苦しみます。
要介護者は申請すら困難
顔認証付きカードリーダーが使えない、有効なのにデータが無効と表示される、別人に紐づけられていたなどマイナトラブルが相次ぎ、国民の不安・不信感の払拭とはほど遠い状況にあります。こうした中でマイナ保険証の利用率は低迷しています。特養、老健などの介護施設の要介護高齢者においてはマイナカードの申請すら困難な状況が続いています。「健康保険証を使うとペナルティ」との批判を受けた診療報酬の加算(DX加算)がの加算措置(特例措置)は12月で期限を迎えますが、継続する方向です。マイナ保険証を利用した患者だけ窓口負担が軽減されるのであれば、健康保険証で医療機関を受診した場合に相対的に負担増となります。
5000億円はすべての患者の窓口負担軽減に充てるべき
政府は、国民一人当たり2万円のマイナポイントをばら撒き、マイナカードの保有者は9091万件(9月30日時点)となりましたが、マイナ保険証の利用登録件数が7149万件(10月22日時点)に留まっています。残りの5000万人は2万円のマイナポイントももらっていません。さらに、マイナ保険証の利用登録した方は、7149万人に達しましたが、医療機関窓口ではわずか4.54%しか利用していない。96%は健康保険証で医療機関を受診しています。一部の方だけ医療費の窓口負担が軽減する政策は不平等を言わざるを得ません。
さらに、総務大臣は予算委員会の審議で、マイナカード取得、マイナ保険証利用登録、公金受け取り口座のポイントに2兆円計上したが5000億円使い残ったことを答弁しました。5000億円あれば、子ども医療費の国制度への拡充が可能です。地方自治体の乏しい財源で何とかやりくりしている妊産婦医療費助成をもっと拡充することができます。岸田政権は実質的な負担を招かないようしながら少子化対策財源を確保すると打ち出しています。そのために社会保障給付を抑制するという本末転倒ぶりを示しています。「使われていない」、「メリットがない」マイナ保険証の利用率向上に5000億円を投入するとすれば大問題です。
マイナ保険証利用促進策が補正予算(総合経済対策)でも明記
岸田政権は11月2日に17兆円の補正予算案を閣議決定しました。所得減税を目玉に打ち出したものの共同通信の世論調査(11/5)でも所得減税を「評価せず」が62%と国民に不人気です。補正予算のタイトルが「デフレ完全脱却のための総合経済対策」です。53頁の「医療・介護分野におけるデジタル技術を活用した効率化」の項目で「マイナ保険証の利用促進や環境整備を進めるため、医療機関・保険者への支援や、「オンライン資格確認等システム」等の改修を行う」と記載し、マイナ保険証利用促進のための医療機関等への支援(厚生労働省)を施策として打ち出しています。マイナ保険証利用者のみ窓口負担軽減が図られることは財政審の提案からも推察されますが、補正予算の審議を通じて具体的な金額や方法が明らかにするなど追及が必要です。