第91回 災害に備えていく~内服薬~

勤務医コラム 第91回 災害に備えていく~内服薬~

桜とともに、木蓮や椿が一斉に咲き始めた2023年3月末の宮城県です。新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、第8波を過ぎて、数字的には前の週を下回り、感染しても分からない程度の人も増える一方、発熱や有症状の人もいる状態です。
2年前の本コラムにも書きましたが、人は動きたい生き物です。人が動くとウイルスも動き、感染拡大し続けるのでしょう。ワクチンや治療法が開発されてきて、ウイルスへの恐怖心・警戒心が低下し、人はさらに動いていく、そんな日が来たということでしょうか。
最近、災害が巨大化しており、その被害は甚大なものが増えています。被害を最小限に食い止めるべく、各自にでき得ることで備えていく必要があると考えます。
今回は、内服薬について記したいと思います。小生は、11年3月11日の東日本大震災の際に、勤務先の病院にて被災しました。発災後、外来の患者さんが「薬が津波で流された」とか、「飲み薬が瓦礫に埋まった」などの理由で、処方を希望し来院されました。発災当初の1週間くらいの期間に処方できたのは、1回2日分のみでした。
その後、3日分、7日分と緩和されるも、処方日数が制限されました。内服薬を1カ月分処方できるようになったのは、同年4月10日前後でした。以前も同じようなことがあったため、小生の患者さんは皆さんが約1カ月分程度の内服薬を持っており、この危機を乗り越えられました。現在でもこの教訓を生かしています。
また、自宅に1カ月分の内服薬があっても、内服できない可能性は高いと考え、3日分くらいはいつも自分が持ち歩いてもらうようにしたり、1週間分程度の内服薬を、自宅以外の家、例えば子どもや親戚の家に置かせてもらったり、自家用車内に配置しておくなどの対策を講じて、年に1回の交換もお願いしています。
慢性疾患の患者さんの内服薬は、まさに生命線です。いかに生命を守っていくか、日々検討を続けることが必要だと思います。

 

中村 起也

広南病院・神経内科医師。認知症や、パーキンソン病など神経変性疾患を中心に診療。日本神経学会専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、介護支援専門員、医療福祉連携士。宮城協会副理事長。保団連勤務医委員会委員。