勤務医コラム 第95回 歯科医師国家試験合格者情報を見て
今年も2006人が歯科医師国家試験に合格した。合格率は63・5%だった。今ごろは初期研修も進み、うまくいかず落ち込んだり、患者さんから感謝されて「やった」と思う気持ちになったりしているはず。私の同じ体験を思い出し心が引き締まる。
ユーチューブ見てびっくり
ユーチューブを眺めていると、「歯学部の闇」と題する動画があった。入学時には歯学部志望の学生は少ないとか、留年率が高いといったことが解説され、その中に「卒業にまつわる闇」というセクションがあった。国公立は、国家試験は自己責任としてどんどん卒業させる。しかし、私立は合格率が下がると評判が落ちるので、落ちそうな学生は卒業させない。学費などはもう1年分、1千万円かかる。大学も商売なので仕方がないね、とのこと。
出願しても受験せず
今年の歯科医師国家試験の新卒の出願者数2383人、受験者数1919人、その差464人(私立455人、国公立3人)で、私立の新卒の26%が出願したが受験していない。当然卒業単位が足りなかったり、体調を崩して受けられない人もいると思うが4分の1は異常である。
求められる
歯科医師とは
現在の歯学部教育では、患者を扱う知識・技能・態度を測定し、能力的に資格のある学生を認定して臨床実習を受けさせる。そして試験が実施され卒業する。
しかし国家試験合格率は約6割にとどまり、共用試験では問題がないのに国家試験に落ちるという状況が続いている。「歯科医師過剰」論を受けてのことなのは明らかだが、歯科医師としての業務はむしろ拡大しており、過剰な時代は終わっている。
患者が歯科医療に望むことは、安心・安全・信頼の歯科医療であり、それは確かな技術、コミュニケーション能力、患者を中心にした対等平等のチームワーク医療と考える。
医療費抑制のための歯科医師削減政策やねじ曲がったといわざるを得ない国家試験も含め歯科医師教育を見直し、これからの歯科医療を担う人材を育てるよう歯科界と国に要求する。私も一翼を担いたい。
江原 雅博
みなと医療生活協同組合・みなと歯科診療所勤務。愛知協会・勤務医委員