政府は「24年秋に健康保険証を廃止しても混乱が起きない」「不安払拭する措置を取った」と主張していますが、11月24日から実施しているマイナ保険証トラブル調査では「不安払拭」とは程遠い状況です。政府の「総点検」のファクトチェックを行いました。
1.政府の対策の特徴
政府の総点検本部の主張は以下の特徴があります。
○「不安感」は心理的ものに過ぎない。不安が起きない措置を取ったので不安感は徐々に解消されると考えている
○総点検によるリスク解消をマイナンバーそのものの紐づけミスに限定して捉えている
○点検した件数を総数とし、紐づけミスが生じた件数は確率的にわずかであると主張する資料を作成している。⇒医療保険の「他人の情報紐づけ」は診療情報・薬剤情報の取り違えリスクをはらむことを軽視している。
○医療現場のマイナ保険証、オンライン資格確認のトラブルの解消を重要視していない。
○「マイナンバーの紐づけミスは既に解消した」と宣言する一方で、医療保険のマイナンバー紐づけミスに深く関係する「登録済データ全体の確認」は不一致の粗選びの段階。保険者・事業所等での総点検は11月28日から開始しており、「24年春までに完了させる」というが確実に解消できる根拠が乏しい。
2.マイナンバー紐づけミス
【政府の総点検結果】
医療保険の総点検は7月末で解消した 1313保険者(1571万件) 0.007%
【保団連調査】
10月以降のマイナトラブル調査(1907件回答)では、20医療機関から他人の情報が紐づけられていたと報告。回答数の1%の医療機関で紐づけミスが確認された
3.負担割合齟齬
負担割合の齟齬も調べれば調べるほどどんどんエラーが出てきている。いつ解決するのかは誰もわからない状況になっている。
【政府の総点検結果】
全保険者点検(令和5年4月1日~令和5年8月18日) 5695件
全保険者再点検(令和5年9月29日~令和5年11月10日) 15879件
トータルで21574件(加入者の0.018%)
【保団連調査】
調査期間:10月1日~12月1日
全回答数:1907件
回答数:162医療機関
割合:8.5% 162/1907
※政府調査は全被保険者チェックでない。保団連調査は該当した医療機関数の割合がかなり多い
4.登録済みデータ(1億6000万件)の全件チェック
【政府の総点検結果】
生年月日・性別不一致 2779件
氏名などが不一致 約139万件
※来年春を目途に総点検する
【保団連の指摘】
・11月末までの総点検では解消しきれなかった。
・住民記録の漢字氏名に齊、髙、邊など異体字が多く、医療保険データとの齟齬が多くなるため難易度が非常に高い突合作業になる。
・厚労省は置き換えて突合したと説明
例) 齊藤 ⇒ 斉藤 渡邊 ⇒ 渡辺
・139万件の氏名等の不一致が確認されたと報告しているが、現実には、かなり漏れがある
参考:全国名字(苗字)ランキング|名字検索No.1/名字由来net
1位 佐藤 およそ1,842,000人
2位 鈴木 およそ1,778,000人
3位 高橋 およそ1,392,000人
4位 田中 およそ1,320,000人
5位 伊藤 およそ1,060,000人
6位 渡辺 およそ1,050,000人
7位 山本 およそ1,036,000人
8位 中村 およそ1,032,000人
9位 小林 およそ1,016,000人
10位 加藤 およそ878,000人
11位 吉田 およそ818,000人
12位 山田 およそ804,000人
13位 佐々木 およそ661,000人
14位 山口 およそ635,000人
15位 松本 およそ619,000人
16位 井上 およそ607,000人
17位 木村 およそ568,000人
18位 林 およそ539,000人
19位 斎藤 およそ535,000人
20位 清水 およそ526,000人