【2024年診療報酬改定・要望書】特定疾患療養管理料からの糖尿病はじめ3疾患除外などに反対します

厚生労働大臣武見敬三殿

2024年2月13日
全国保険医団体連合会
医科政策部長 橋本政宏
医科社保・審査対策部長 武田浩一

【要望書】特定疾患療養管理料からの糖尿病はじめ3疾患除外などに反対します

貴職が果たされます国政の重責に敬意を表します。
本会は地域の第一線でプライマリケアを担う医師・歯科医師を中心とした全国保険医団体連合会(会員数10万7千人)です。
2024年度診療報酬改定では、200床未満の病院、診療所を対象として、生活習慣病等について「治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合」を評価した特定疾患療養管理料から算定の9割強を占める糖尿病、高血圧、脂質異常症(以下、3疾患)を対象疾患より除くとしています(特定疾患療養管理料に関わる処方(箋)料を評価した特定疾患処方管理加算も同様)。生活習慣病管理料と外来管理加算(再診料加算)の併算定は不可とされ、特定疾患処方管理加算についても28日以上の処方に算定が限定されます。
つきましては、地域で第一線の医療を担う医療者として、生活習慣病患者の治療・管理が円滑に進められるように、以下について要望いたします。

<要望項目>

1.糖尿病、高血圧、脂質異常症を特定疾患療養管理料(及び特定疾患処方管理加算)の対象疾患から除外しないこと
2.生活習慣病管理料と外来管理加算の併算定を認めること
3.少なくとも、糖尿病など3疾患で特定疾患療養管理料を算定していた医療機関が、生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定できるよう、適切な算定要件を設定すること。

<要望の理由>

財源捻出のため、地域の「かかりつけ医」にしわ寄せ

「少子化対策」の「財源確保」や、医療・社会保障費の伸びの抑制に基づき、2024年度診療報酬改定率はネットマイナスとされ、事実上、技術料に配分される改定率はプラス0.18%に抑え込まれる中、「診療所を中心に管理料や処方箋料等の再編等による効率化・適正化を行う(改定率▲0.25%)」(医療費ベースで1,200億円前後と想定)とされました。これを受けて、今回の改定では、上記の生活習慣病管理に関わる一連の報酬評価が削減されます。医科診療所(無床)において、再診回数に占める特定疾患療養管理料の算定回数割合は、内科で67.4%、外科で44.6%、小児科で36.2%、泌尿器科で24.1%など日常診療で大きなシェアを占めています(社会医療診療行為別統計2022年6月審査分)。高血圧・糖尿病・脂質異常症などで特定疾患療養管理料(及び特定疾患処方管理加算)が算定できなくなる場合、内科系診療所を中心に月100万円単位規模での収入減に見舞われます(※診療規模に応じて上下)。減収をリカバリーするため、診療時間(診療患者数)は延び、医療従事者の働く環境がさらに悪化することが危惧されます。ネットマイナス前提の下、改定財源を捻出するため、地域の第一線で「かかりつけ医」機能を担う医師・医療機関にしわ寄せを行うことは本末転倒であり、医療従事者の働き方改革にも逆行するものです。

生活習慣病管理料の算定回数は特定疾患療養管理料の57分の1

3疾患に係る医学管理は新設する生活習慣病管理料(Ⅱ)で対応するとしていますが、答申案となる「短冊」では同管理料(Ⅱ)において、「患者の同意に基づく療養計画を策定」した上、「当該治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理」を行うことを求めており、患者の署名を得た「療養計画書」策定はじめ、特定疾患療養管理料よりも高い算定要件のハードルが求められます。しかし、医師が足りず一人一人の患者にじっくり向き合える時間も大幅に限られていることなどからも、3疾患について、特定疾患療養管理料の算定回数(2022年5月診療分)1165.5万回に対して、生活習慣病管理料の算定回数(同上)は20.3万回と約57分の1にすぎません(中医協総会資料、2023年11月10日)。特定疾患療養管理料(特定疾患処方管理加算)からの3疾患の除外は、医療現場に多大な混乱を招くことが強く危惧されます。

二つの管理料は患者像・治療戦略が異なる

二つの管理料では患者像・治療戦略が異なります。生活習慣病管理料(対象は糖尿病、高血圧、脂質異常症)は、中等度以上はじめ治療管理の強化を要する患者について、検査数値目標などを設定して、生活習慣(食事、運動、喫煙・飲酒、仕事・余暇・睡眠、減量など)に対して専門的・総合的な治療管理を行うことを評価したものです。患者の同意(署名)を得た「療養計画書」を定めて、総合的な治療管理を行います。他方、同じ生活習慣病でも、年齢・進行具合や合併症の有無など症状・程度は異なるため、生活習慣病管理で求める「療養計画書」まで策定しなくても、治療計画を念頭に必要・効果的な指導(例えば、家庭での血圧測定、調味料はなるべく減塩、麺類の汁は残すなど)や検査計画などを随時、患者に伝えながら治療を進めている場合もあります。こうした現場の実態を適切に評価したのが、特定疾患療養管理料といえます。
生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料では患者像が異なり治療戦略の策定・説明なども異なってくる以上、特定疾患療養管理料から3疾患を外すことは不合理です。特定疾患療養管理料からの3疾患除外は、医師が現に発揮している医学管理・医療技術を否定するものと言わざるを得ません。

高い算定要件を一律に課すと患者との齟齬も

また、患者の就労・生活・社会環境、さらには医師との相性なども含めて、医師が求める治療方針に対して患者が参加・協力できる程度・水準も変わってきます。他職種で連携し治療支援を行うにしても、診療ガイドラインなど医学的モデル(治療行為の手順など)を患者に一律に適用できない、割り切れない患者や現場の実態が厳然としてあります。また、生活習慣病の初期は自覚症状が薄いため、受診しない/受診を中断する患者も少なくない中、受診時間の融通性を持たせたり、より薬価の低い薬剤や後発品を考慮するなど、医療現場では受診を継続してもらうこと(受診中断者への受診勧奨含め)に努力を払っています。こうした中、厳密に数値目標を設定し生活習慣管理を求めていくような対応(生活習慣病管理料)を患者に一律に求めた場合、対応できない・馴染まない患者との間で齟齬が生まれ、場合によっては治療の中断に至ることも危惧されます。

外来管理加算は医師の一連の行為を評価

外来管理加算(再診時に52点を加点)は、特定の疾患の有無に関わりなく、外来での医療面接における、丁寧な診察・判断・患者への説明といった医師の一連の行為そのものを評価したものです。上記二つの管理料とは全く異なるものです。生活習慣病管理料と併算定できない合理的な理由はありません。本来であれば、処置・検査・リハビリ等を実施した際にも、再診時において、外来管理加算が算定できるよう改善すべきです。