厚労省は5月から7月にマイナ保険証利用促進月間をとし、医療機関等に最大20万円の一時金、テレビCMなど利用率向上に向けてなりふり構わず姿勢です。4月24日にはマイナ保険証の利用率が3%と低い医療機関、薬局に対して一斉に最大20万円の一時金の案内やメールを送信し利用率向上にテコ入れを図りました。医療機関側に送られてくるメールを入手しました。様々な受け止めが報告されています。
小児科医 成績が悪い人って言われているみたい
メールは支払基金が運営する総合ポータルサイトから各医療機関に送信されたもので、差出人は「厚生労働省」です。
メールのタイトルには【マイナ保険証の利用率が低い施設にお送りしております。】本年12月2日から現行の保険証は発行されなくなります。マイナンバーカードの保険証利用を支援する一時金制度が新たにスタートします。マイナンバーカードの利用促進にご協力ください。と記載されています。
また、本文には、令和5年12月から令和6年3月まで連続して、マイナンバーカードの健康保険証としての利用率(*)が3%以下の医療機関の皆様にお送りしております。
このメールを見たクリニック院長からは、「成績が悪い人と言われている見たい(小児科)」と不快感を示されています。
利用促進は義務でない 資格確認の手段は患者が選択するもの
現行の健康保険証は2024年12月2日に廃止されますが、最大1年間有効となる経過措置が設けられています。また、マイナ保険証を保有していない方には10月以降に資格確認書が送られる見込みです。マイナ保険証の利用登録は7100万人ですが、登録していない方が5000万人います。2024年3月のマイナ保険証利用率は5.47%と低迷しており、約95%が現行の健康保険証を使い続けています。これが国民の圧倒的な声です。
医療機関・薬局に、一方的・一面的な情報伝達でマイナ保険証の利用勧奨に取り組ませることは問題です。マイナ保険証利用は任意選択であることは武見厚労大臣も国会で答弁しています。
医療機関に一時金を投入し、義務でないものを「利用率低い」と記載し、利用促進のメールを送りつけることは大問題です。
マイナ保険証利用できない医療機関に「恫喝」
さらに、受診された方がマイナンバーカードにより資格確認を行おうとした際に、これを拒否することや、その際にカードリーダーが使える状態になっていない場合には、療養担当規則等に抵触するおそれがあります。ご注意ください。
との記載について「マイナ保険証利用できないと療養担当規則に抵触するおそれ」は医療機関を監督する所管官庁から「恫喝」に等しいと反発も出ています。
患者さんがカードリダーを利用しようとしても顔認証付きカードリーダーのエラー等により使えなかったり、マイナ保険証を利用しても保険資格のデータが古いまま更新されていない、データがないなどマイナトラブルが多発しました。
マイナ保険証使わないと受診できない?との誤解も
患者さんから「マイナ保険証がないと診察してもらえない」と訴えがありました。受診している医療機関の案内を見て「マイナ保険証がないと受診できなくなる」との誤解が広がってます。
患者さんには「いつも通り受診して大丈夫」と伝えました。
医療機関ポスター文面
「令和6年12月2日をもちまして、現在ご使用中の紙・カードの健康保険証が廃止されマイナンバーカード(マイナ保険証)に一本化されることになり受診時にはマイナンバーカード(マイナ保険証のご提示をお願いすることとなりました。今まで当院では保険証と診察券の両方を提示していただいておりましたが、マイナンバーカードは診察券としても利用できるためマイナンバーカードを提示いただくだけで受付を済ませることができるようになりました。今後受診時には患者様には診察券代わりにマイナンバーカード(マイナ保険証)の提示をお願いします。院長)
厚労省は「マイナ保険証は任意」を貫け
厚労省は、4月25日にマイナ保険証の紐づけミスが新たに545件(累計で9200件)あったことを公表しました。別人の情報紐づけもまだまだ解消されていません。トラブルを抱えながらマイナ保険証の利用推進を強引に進める厚労行政に医療関係者からは「どこを向いて仕事をしているのか」と怒り心頭です。
厚労大臣が国会で「マイナ保険証利用は任意」「12月の利用率の目標は設定しない」と国会答弁したのであれば、健康保険証かマイナ保険証のどちらを使うかは患者・国民の任意選択に委ねるべきです。
なりふり構わずマイナ保険証の利用促進は中止し、12月2日の現行の健康保険証廃止も撤回すべきです。
厚労省が医療機関に送信したメール(4/26)
From: 総合ポータルサイト <from@mail.iryohokenjyoho-portalsite.jp>
Sent: Friday, April 26, 2024 6:41 PM
Subject: 【マイナ保険証の利用率が低い施設にお送りしております。】本年12月2日から現行の保険証は発行されなくなります。マイナンバーカードの保険証利用を支援する一時金制度が新たにスタートします。マイナンバーカードの利用促進にご協力ください。
日頃より、医療保険行政の推進にご協力いただき、厚く御礼を申し上げます。
本メールは、令和5年12月から令和6年3月まで連続して、マイナンバーカードの健康保険証としての利用率(*)が3%以下の医療機関の皆様にお送りしております。
(*マイナンバーカード利用件数/オンライン資格確認件数の割合)
マイナンバーカードの保険証利用については、医療機関を対象とした支援金や診療報酬上の加算などを設けて利用促進を図っていますが、貴医療機関におかれてもぜひご活用いただきたく、本メールでは、これらの支援策の概要や、ポスターの掲示やチラシの配布、チェックリストによる自己点検や好事例などをご紹介しております。また、オンライン資格確認等システムの運用に関するお困りのことがある場合のお問い合わせ方法についてもご案内しています。
マイナンバーカードの保険証利用は、患者ご本人の健康・医療情報に基づくより良い医療を受けることができることや、外来の窓口で限度額を超える支払の免除が受けられるなどのメリットがあり、我が国の医療DXを進める上で基盤となる仕組みです。
また、マイナンバーカードの電子証明書を用いた確実な本人確認により、なりすましが防止できるほか、期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や、手入力による手間等の事務コストが削減されるといった医療機関にとってのメリットもあります。
本年12月2日からは、マイナンバーカードによる受診を基本とする仕組みに移行し、現行の保険証の発行を終了することとしております。
本年12月の保険証発行終了に向け、現在のうちから、マイナンバーカードの利用促進を図り、マイナンバーカードを基本とする仕組みへの円滑な移行に向けて準備を進めていただくようお願いいたします。
以下では、マイナンバーカードの保険証利用に関し、
- 新たにスタートする「医療DX推進体制整備加算」とマイナンバーカード利用促進支援のための一時金制度のご案内
- 療養担当規則(※)や診療報酬に関しご留意いただきたい事項
(※ 保険医療機関及び保険医療療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号))
等をご案内しております。貴医療機関におけるマイナンバーカードの一層の利用促進に向け、ぜひご一読いただきますようお願いいたします。
【医療機関に対する支援策:医療DX推進体制整備加算と一時金制度】
- 本年6月より実施される診療報酬改定においては、マイナンバーカードや電子処方箋など医療DXを推進する体制の整備を評価する「医療DX推進体制整備加算」が導入されます。ぜひ積極的なご活用をお願いいたします。
この加算の算定には、以下の要件を満たしていただく必要があります。詳細はこちら
(https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001240883.pdf#page=28)でご確認ください。
・一定の要件を満たしたポスターを掲示していること
(要件を満たしているポスターは、こちら(https://www.mhlw.go.jp/stf/index_16745.html)からダウンロードいただけます。)
・窓口や掲示物、プレート等でマイナンバーカードを持参するよう案内していること
(窓口や掲示物、プレート等で現行の保険証の提示のみを案内している場合は本加算の対象となりません。)
・マイナンバーカードの利用実績(利用率)が一定以上であること 等
○ また、この「医療DX推進体制整備加算」が創設されることを踏まえ、本年1月から実施しているマイナンバーカードの利用促進に対する支援金制度のうち、後期分(本年6月〜11月)を見直し、本年5月〜7月のマイナンバーカードの利用実績に応じて、診療所に最大10万円(病院は20万円)を一時金として支給することといたしました。
詳細はこちら(https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0011205)でご案内しておりますので、ぜひご活用いただき、より多くの方々にマイナンバーカードをご利用いただけるよう、窓口での声掛け、利用勧奨チラシの配布など積極的な勧奨をお願いいたします。
なお、この一時金の実施に伴い、本年1月から実施している支援金制度は前半期(5月末)をもって終了となります。
【療養担当規則や診療報酬に関してご留意いただきたい事項】
- 現在、マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)には、医療機関の窓口において、マイナンバーカードを利用しようとしたが、拒否されてしまった、カードリーダーが使える状態になっていなかった等の相談が寄せられています。
受診された方がマイナンバーカードにより資格確認を行おうとした際に、これを拒否することや、その際にカードリーダーが使える状態になっていない場合には、療養担当規則等に抵触するおそれがあります。ご注意ください。
- また、現在、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を算定しているにもかかわらず、必要な院内掲示を行っていない場合には、この加算の施設基準※を満たさず、算定が認められないおそれがあります。ご注意ください。
※ 施設基準
(1)電子情報処理組織を使用した診療報酬請求(オンライン請求)を行っていること。
(2)電子資格確認(オンライン資格確認)を行う体制を有していること。
(3)次に掲げる事項について、当該保険医療機関の見やすい場所及びホームページ等に掲示していること。
ア オンライン資格確認を行う体制を有していること。
イ 当該保険医療機関を受診した患者に対し、受診歴、薬剤情報、特定健診情報その他必要な診療情報を取得・活用して診療を行うこと。
【医療機関等の窓口におけるオンライン資格確認等システムによる照会の取扱い】
令和3年10月にオンライン資格確認等システムが本格的に運用されて以降、既に保険医療機関等において把握されている被保険者番号等により、同システムに照会を行い、その資格が有効であることを確認することが可能となっています。先般、本取扱いに関して、「医療機関等の窓口におけるオンライン資格確認等システムによる照会の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」(令和6年4月17日厚生労働省保険局医療課事務連絡)を発出し、
・その月の全ての受診等において保険医療機関等が発行した診察券等の提示のみを求め、オンライン資格確認等システムへの照会をもって受給資格の確認を行ったとする運用は、受診等の際に患者本人が提示した情報に基づく資格確認を行っていない点で十分とは言えず、適切な対応とは言えない
・できるだけ早期に、現行の健康保険証から健康・医療情報の活用が可能となるマイナンバーカードへの移行が実現できるよう、患者に受診の都度マイナンバーカードを持参いただくよう働きかけることについてご協力いただきたい
等、具体的な取扱いについて案内しております(https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001246867.pdf)ので、日々の資格確認を行う際には、ご留意ください。
【チェックリストによる自己点検】
○マイナ保険証の利用促進に向けて、医療機関自らが点検するための簡単なチェックリストが厚生労働省ホームページに掲載されています。
医療機関向け:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001243526.pdf
一度、点検してみて下さい。
【マイナンバーカードの利用率が高い医療機関の取組事例などのご紹介】
○マイナンバーカードによる受診等については、これまで、医療機関の皆様から、
・ 顔認証付きカードリーダーにより、あっという間に資格確認が完了できるようになった。
・ 患者が分からない薬剤の情報も正確に把握することが可能になり、重複処方の防止や副作用の確認につなげられる。
などのお声をいただいております。
○厚生労働省ホームページでは、
・ マイナンバーカードの利用率が高い医療機関の取組
(https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0011308)
・ 顔認証付きカードリーダーのシステムトラブル時の対応方法等の説明動画
(https://www.youtube.com/watch?v=QJrdxpjp16w&t=6s)
・ 窓口で利用いただける広報素材(https://www.mhlw.go.jp/stf/index_16745.html)
などを多数掲載しております。貴医療機関において、マイナンバーカードによる受診等を進めるため、ぜひご活用いただき、利用促進に取り組んでいただくようお願いいたします。
厚生労働省