【調査】岩手県 高齢者施設利用者・入所者のマイナカード管理できない  79.1%

【調査期間】 2024 年4月16日~ 5月15日
【調査対象】岩手県内の特別養護老人ホーム(以下特養)、介護老人保健施設(以下老健)、介護医療院178施設(岩手県ホームページでFAX番号公表施設のみ)
【調査方法】FAXによる調査票送付および返信
【回答数】67施設回答率37.6%
【調査目的】
政府は、2023年6月2日の参議院本会議において、2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する法案を可決、成立させた。また、同年12月22日の閣議において、現行の健康保険証を2024年12月2日に廃止することを決定した。資格確認のトラブルや利用者の不安が表れている利用率の低下などが解消されていない中、認知症などの利用者を抱える高齢者施設において、現行の健康保険証や介護保険被保険者証を廃止し、マイナンバーカードに一本化することによる影響について調査を行った。

1、健康保険証や介護保険被保険者証の管理について設問1~設問2
◎利用者・入所者の健康保険証を管理している施設は88.1%
◎利用者・入所者の介護保険被保険者証を管理している施設は91.0%
今回回答があった特養、老健において、健康保険証、介護保険被保険者証それぞれ約90%の施設で管理をしている。管理している施設の多さからも、現状では、健康保険証、介護保険被保険者証を管理することに問題は生じていないと見られる。

2、マイナンバーカードの申請や管理について設問3~設問6
◎利用者・入所者のマイナンバーカードの申請(代理)に対応できないと回答した施設は68.7%
その主な理由としては、「本人の意思確認ができない(76.1%)」「手間・労力がかかり対応できない(73.9%)」「本来の業務ではない(67.4%)」などであった。
◎利用者・入所者のマイナンバーカードの管理(暗証番号含む)できないと回答した施設は79.1%と申請に対応できないという施設よりも多くなっている。その主な理由としては「カード・暗証番号の紛失時の責任が重い(90.6%)」「カード・暗証番号の管理が困難(88.7%)」「不正利用、情報漏えいへの懸念(71.7%)」が上位を占めた。デジタル庁は、利用者本人又は第三者が被った損害について故意または「重」過失を除いて責任を負わないとマイナポータル規約で示しており、施設が管理する場合、不正利用や情報漏洩等の損害の責任は施設が負うこととなるため、管理について懸念する見解が多かったと見られる。

3、健康保険証廃止により施設および利用者・家族への影響・危惧について設問7~設問8
◎健康保険証廃止による施設の影響・危惧については、「保険証廃止と一体化したマイナンバーカード(暗証番号含む)の管理が困難となる(91.0%)」と最も多く、次いで「マイナンバーカードの取得・利用が困難な利用者への対応増加(代理申請等)(82.1%)」となっている。その他にも、更新、再発行の対応の困難やトラブルを懸念する回答も上位を占めており、施設職員の業務が膨大で人手不足が問題となっている中、現行保険証廃止により対応や管理の業務が増加することへの懸念を示す回答が多かった。
◎健康保険証廃止による利用者・家族の影響・危惧については「マイナンバーカードの取得・利用が困難な本人・家族の負担が増加する(85.1%)」が最も多く、マイナンバーカードの紛失、更新切れ、盗難等の対応が困難であることやトラブルが増加することを懸念する回答が多かった。また、「本人が手続きに必要なIT機器が使えない・理解できない(74.6%)」との回答も多かったが、利用者・家族への説明なども施設職員が行うこととなり、業務の増加に繋がっている。

4、健康保険証の廃止、介護保険被保険者証の廃止について設問9~設問10
◎現行の健康保険証廃止に64.2%が反対
◎介護保険被保険者証廃止に65.7%が反対
6割を超える施設において、健康保険証の廃止、介護保険被保険者証の廃止に反対する回答であり、賛成は少数である。上記のとおり、マイナンバーカードに一本化することへの懸念や業務増加によるものと思われる。

この文書に関する問い合わせ先
岩手県保険医協会(☎019-651-7341)
岩手県社会保障推進協議会(☎019-654-1669)