2024年度介護報酬改定及び介護保険制度改善のための緊急要求

内閣総理大臣 岸田 文雄 様
財務大臣   鈴木 俊一 様
厚生労働大臣 武見 敬三 様

2024年6月21日
地域医療対策部会 医科担当副会長 中島 幸裕
歯科担当副会長 森元 主税

2024年度介護報酬改定及び介護保険制度改善のための緊急要求

2024年の介護報酬改定の最大のテーマは、介護職員の処遇改善であったが、改定内容はまったく不十分であり、介護事業者の倒産は過去最悪のペースとなっており、このままでは介護を必要とする方がサービスを受けられない事態となりかねない。
一方、65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の基準額の全国平均は、月額6,225円にもなる(2024~26年度)。諸物価高騰もあり、とても払いきれない金額になっている。
保険料の引き上げと介護報酬抑制の原因は、保険財源に対する国庫負担や企業負担が少ないことにある。
介護リスクは要支援者・要介護者だけでなく、家族介護等によって働き手を失う企業や社会全体にとっても大きな痛手である。介護を含む社会保障分野の総波及効果は公共事業よりも高く、主要産業より雇用誘発効果は高い。国庫負担を大幅に拡大することは、介護リスクを低減させ、経済を活性化させることにつながるものである。
こうしたことから、2024年介護報酬改定及び介護保険制度改善のため、下記の実現を求めるものである。

1.国庫負担を大幅に引き上げて、訪問介護をはじめとした介護報酬を緊急に引き上げること。
⑴ 2024年改定で引き下げた訪問介護、介護予防訪問リハビリ、大規模型通所リハビリテーション(Ⅰ)の報酬を引き上げること。
⑵ 介護報酬での対応が困難であれば、全額公費で対応すること。
(理由)
⑴ 訪問介護については、収益率が7.7%の黒字であることを引き下げの理由としたが、小規模事業所は調査に応じる余裕すらなく、有効回答率は45.2%と低く、大規模事業所の経営がそのまま反映したものである。このままでは廃業を余儀なくされる事業所が出てくる。
⑵ 介護予防訪問リハビリや大規模型通所リハビリテーションも諸物価高騰の中で事業所の継続が困難になっている。

2.事業所等の財務状況の報告の対象除外を拡大すること
⑴ 居宅療養管理指導費のみを算定する医療機関等については、対象から除外すること。
⑵ 介護サービスに携わる職員が常勤換算で3人以下の事業所については、対象から除外すること。なお、報告対象から除外する小規模事業所の経営状況は、協力事業所に財政措置を行った上で抽出調査を実施すること。
(理由)
⑴ 介護報酬がほとんど引き上げられない中で、事業所等の財務状況の報告を居宅療養管理指導費のみを算定する医療機関等にも課すことは、大きな負担を強いるものであり、居宅療養管理指導から撤退する医療機関が増え、要支援者・要介護者に大きな損失となる。
⑵ 小規模な介護サービス事業所に財務状況の報告を課す大きな負担を強いるものであり、撤退する事業所が増え、要支援者・要介護者に大きな損失となる。

3.介護報酬における単一建物居住者の取扱いの改善について
単一建物居住者に対する居宅療養管理指導の減算を止めること。少なくとも、同一日に同一建物の1人だけしか訪問を行わない場合については、減算しないこと。
(理由)居宅療養管理指導は、居宅療養上の指導や他の事業所との連携等を評価するものであり、人数によって減算する根拠はない。

4.国庫負担を大幅に拡大し、次の対策を行うこと。
⑴ 2025年8月に予定されている多床室への室料負担導入を止めること。
⑵ 介護保険料を引き下げること。
⑶ ケアプランの有料化を止めること。現在の利用者負担割合を引き下げること。
(理由)低い年金と物価高騰の中で介護保険料の引き上げは、保険料滞納を続出させる。また、現行の負担割合では利用したくても利用できない。その上、多床室への室料負担の導入は行うべきではない。またケアプランは介護保険制度の根幹であり、有料化すべきではない。一方で必要な介護を提供するためには、介護事業所に十分な報酬を保障する必要がある。そもそも介護リスクは社会にとって損失であるが、介護に十分な財源を投入することは経済活性化につながる。従って、国庫負担を大幅に拡大し、これらの実現を図るべきである。

以上