障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)は、9月26日に障害者の「マイナ保険証」問題の解決を求め、厚生労働省・デジタル庁、総務省、国会議員に対し要請行動を行うとともに、記者会見を開き、「現行の健康保険証を残してください!12月2日の廃止はやめてください!」を訴えました。障害者にもマイナ保険証が強制されている現状と問題点について障全協資料より抜粋してご紹介します。
マイナ保険証の大きな問題点
○健康保険証における保険者の交付義務をなくし、申請主義にすることは、権利としての医療を支えてきた国民皆保険制度の土台を壊す
○この制度改革では、マイナ保険証を持つ人も、持たない人(持てない人含む)も、どちらを選んでもたくさんの無保険者が生み出される
○マイナカード・マイナ保険証の申請・取得・管理・利用・更新などについて、意思決定が困難な人などの支援を誰がどのように責任をもって行うのかが、決まっていない
○マイナ保険証を利用するか、利用しないかによって医療を受ける権利に制度的格差を持ち込むことは、法の下の平等を謳う憲法、無差別平等であるべき社会保障の基本に反する
マイナ保険証には、こうした根本的な問題があるがゆえに、実際に、障害者・家族が困っている問題があり、健康保険証の廃止前でも、複数の事例があがってきています。
障害者の「マイナ保険証」緊急アンケート(兵庫障害者連絡協議会)
たくさんの困りごとや不安の声があがっています。
○難病や障害のある人が体調などの関係で役所に行くことができず、マイナ保険証の更新手続きができなかった(本人でないとダメだと言われた)。
⇒保険証の交付義務がなくなったマイナ保険証の申請主義の実害。期限管理が難しいという不安の声多数あり。自己責任の申請主義では、無保険になるリスクが大きい。
⇒資格確認証が自動交付(プッシュ型)になったのはよかったが、当面の間として、4~5年後の更新は自動交付されてないとなると、やはり無保険になる人が続出する。
マイナ保険証の利用時の後退している事例
・暗証番号を忘れて使えなかった。
・弱視のため、パスワードを入れるのが遅くて後ろから急かされて文句を言われた。
・重度障害のある娘は顔認証をさっと行うことができなかったり、番号認証を親がする間、待てないなど、保険証を手渡すだけの方が簡単。
マイナ保険証の取得・管理の事例
・とても大切なものなので管理が本人にはできないので親が先に亡くなったときに困ると思い、作っていない。
・本人を連れていくのに不安。母一人では連れていけない。
⇒政府は、マイナ保険証のメリットに患者や障害者ほどデジタル化は有効だというが、支援が必要な人のカード取得・管理などの公的責任がないため、カードを取れないことを前提に、
暗証番号なしマイナ保険証や資格確認証のみで対応しようとしている。※重度障害者の排除⇒長野県保険医協会が県内の高齢者施設や障害者施設を対象に調査したところ、回答(243 施
設)した7割近くの施設がマイナンバーカードを「管理できない」と答えた。(9/4NHK 信州)
○マイナカードを取った人の利便性だけを向上させる一方で、取らない・取れない人を不便にさせることがあってはならない。なんでもマイナカードへの一体化が顕著な例。※制度的格差
○障害があるために詐欺などの被害に遭う人も少なくなく、マイナカードなどのデジタルを利用した犯罪に巻き込まれ、気づかないうちにリスクが広がれる懸念もあります。
こうした実態を解決する根本的な見直しがない限り、政府が掲げる「誰一人取り残さないデジタル化」は実現しません。だからこそ、デジタル化をするのであれば、第一に、支援を必要とする障害者や高齢者など社会的に弱い立場に置かれている人たちを「置き去りにしないデジタル化」を実行するべきです。現在、政府が推し進めるマイナカード・マイナ保険証は、制度的格差と置き去りにする人を増やすだけの愚策です。
障害者の「マイナ保険証」問題を解決する緊急要望 】
以下の要望は、現行の健康保険証を残せば、ほとんどのことが解決されます。政府が12月2日の健康保険証「廃止」を中止せず、強行しようとしているため、私たちは要望しています。
健康保険証の存続について
1、マイナカード・マイナ保険証を持っているか、持っていないかによって、制度利用時の格差が起こらないようにしてください。
2、健康保険証の廃止は、障害者や高齢者など社会的に弱い立場におかれている人たちが、無保険状態に陥るなど、大きな不利益を被ります。健康保険証を残し、少なくともマイナ保険証と併用して利用できるようにしてください。
3、国民皆保険制度の土台を支えてきた保険者の保険証交付義務を存続してください。
マイナ保険証の強制取得政策について
4、自立支援医療や難病と小児慢性特定疾病患者への医療費助成などを受ける場合に、マイナ保険証の利用が必須とならないようにしてください。
5、マイナカードに運転免許証や障害者手帳、また、自治体独自の医療費助成制度などを一体化させていくことはやめてください。
6、健康保険証を携帯電話の契約や銀行口座開設、クレジットカード発行などの本人確認証明に利用できなくなることをやめてください。
7、生活保護受給者の医療券、福祉医療費助成・乳幼児医療費助成の医療証は、マイナ保険証でなく資格確認書で受診する人が存在する限り、紙ベースの医療証の発行・交付を継続してください。
資格確認証の発行について
8、資格確認証は、マイナカードを持っていない人、返納した人、マイナ保険証登録した人、保険証登録を解除した人などに、確実に届くよう国として公的責任を果たしてください。
9、資格確認証については、発行・更新手続きすべてをプッシュ型(申請主義ではなく)とするようすべての保険者に義務付けてください。また、マイナ保険証を持っていても必要な人には、資格確認証が発行されるようにしてください。
マイナカード・マイナ保険証の利用、申請・取得・管理・利用・更新について
10、マイナカード・マイナ保険証における個人情報の漏えいをはじめ、詐欺や不正利用があることを前提にした対策をとってください。とりわけ、被害にあった人がすぐにカード利用をストップできいるような相談窓口・対応窓口の設置など、公的な責任で被害に対処する仕組みを早急につくってください。
11、昨年から行われてきたマイナンバー情報総点検作業ですべてのひも付けミスがなくなったわけではありません。手作業の入力ミスが起こらないようなシステムにしてください。
12、マイナカード作成時の証明写真の申請却下トラブルをなくすようにしてください。
13、意思決定が難しい障害者がマイナカードを取得する場合に、成年後見制度の利用を取得要件とすることはやめてください。
14、特別養護老人ホームをはじめ、障害者の入所施設やグループホームなどの福祉現場からは、マイナカード・マイナ保険証の管理は難しいという声が大半を占めています。政府は、無責任に対応をあらため、福祉現場において、マイナカード・マイナ保険証の申請・取得・管理ができるよう、その責任を担うに値する公的な管理体制を整備してください。
15、マイナカード・マイナ保険証の更新についても、申請主義ではなく、プッシュ型で行えるように制度・システムの再構築を図ってください。