【厚労大臣会見】電子処方箋の過去のトラブルへの対応に瑕疵はなかったのか?

医師の処方とは異なる医薬品が表示される電子処方箋のトラブルについて、保団連は、12月24日の厚労大臣記者会見で質問しました。

会見では、「電子処方箋の本格実施前に行われたモデル事業での準備・運用面での10つの課題が解決しない中で拙速に進めたことが今日の重大トラブルを招いたのではないか」と指摘しました。福岡厚労大臣は、「モデル事業の課題は解決した上で、同サービスを開始した。」「モデル事業では、「用法コード」に係る紐づけミスがあったが、電子処方箋の運用開始時に対応を済ませている。今回の事案は「用法コード」ではなくて、「医薬品名コード」に関する事案だ」と釈明しました。

令和5年3月の「モデル事業・中間報告」では「用法コードの紐づけの不備により、薬局で受領した処方箋情報と電子処方箋管理サービスに登録された情報が異なる事象が発生し、現場に混乱を招いた」と指摘していました。「医薬品名」と「用法」でコードの種類は異なりますが、マスターコードへの紐づけミスという点では同類のトラブルです。電子処方箋管理サービスと医療機関・薬局が用いるコードやシステムの違いに起因するトラブルであり、関係ないとは言い切れないものです。

モデル事業の課題指摘について、厚労省医薬局総務課の担当者は、「電子処方箋管理サービスそのもののシステム改修はしていないが、医療機関・薬局がマスタコードの紐づけをする際にチェックシートで注意喚起をするなどの対応で紐づけミスは起こらないようにした」と説明しました。医療機関・薬局・ベンダー側に責任を押し付ける形でのトラブル防止は不十分です。システム面にとどまらず、運用面での電子処方箋システムを巡るトラブル・課題は残されています。

 

2023年6月に発覚していたトラブル

医薬品の誤表示が7件確認されたことについて、保団連は、「最初に報告された事案が1年半前から確認されていたのになぜすぐに公表しなかったか」と追及しました。

これに対して、福岡厚労大臣は「今般の事案についても2023年6月に発生したものの解決済みの個別事案として厚労省担当部局に報告された。24年10月以降に立て続けに2件発生したことから改めて認識された」と釈明しました。「報告は受けていたものの、重大事案として認識できなかった」というものです。

 

<12月24日厚労大臣記者会見>

記者

電子処方箋のトラブルについて、発行停止は明日25日からの予定に変更はないか。先週公表された7件以外に新たなトラブルが把握されているか。今回のトラブルや発行停止について、医療機関やからどのような声が寄せられているか。

厚労大臣

医師の意図と異なる医薬品の処方を防ぐための対応として、12月20日から12月24日までの間、医療機関、薬局そしてシステムベンダー間で点検を行うとしている。その関、電子処方箋の発行を停止することとした。回答がない医療機関等に対して、個別に確認の作業を行っている。点検結果を踏まえて再開の判断をしたい。これまでの点検で誤表示の新たな報告は現時点では把握していない。医療機関・薬局・システムベンダーからは、点検の重要性は理解する声がある一方で、急な点検に戸惑ったなど様々な声が出されている。

保団連

電子処方箋の誤表示について、モデル事業・中間報告で準備・運用段階で10点の課題を指摘されていた。これらの課題を解決せずに、見切り発車した形で進めたことが、今回の誤処方に発展しかねない重大なトラブルを招いたのではないか。今回確認された7件も1年半前に発生したものもあると聞いているが、なぜすぐ公表しなかったのか。

厚労大臣

モデル事業の報告では、「用法コード」に係る指摘があったことは事実だが、電子処方箋の運用開始時に対応を済ませている。今回の事案は「用法コード」ではなくて、「医薬品名コード」に関する事案だ。今回は健康被害が発生しうる重大なものと受け止めて、今般の事案の発生を踏まえ国民に必要な薬品を確実にお届けするように万全を期したいと考えだ。

今般の事案は、24年10月25日、11月11日に連続して事案を把握したことを受け、専門家を交えて原因の特定、12月10日の医療機関、薬局に対して注意喚起した。そして12月13日、17日に関係団体からのダミーコードの一時的な使用停止の要請といった経緯を経て、今般の公表対応に至った。把握されている7件のうち2023年6月に発生した事案は、当時、個別事案として認識して対応され、対応済みの事案として厚生労働省の担当者に報告されたものについて、24年10月以降の経緯の中で改めて認識されるに至った。