「世田谷区・渋谷区 資格確認書全員交付」に厚労大臣が異論

世田谷区、渋谷区で国保加入者全員に資格確認書を交付する方針を示したことについて、福岡厚労大臣は記者会見(5月16日)で「資格確認書は、国民健康保険法上、マイナンバーカードでオンライン資格確認を受けることができない状況にある方に交付することとされている」と両自治体の対応に異論を述べました。

「プッシュ型」「ダブル持ち」交付を国が認めてきた

資格確認書は法律本法では、「申請主義」なのに、2023年8月の閣議決定で保険者が必要と認めた場合は申請交付ではなくプッシュ型で交付してよいことになりました。マイナ保険証と資格確認書のダブル持ちは原則不可ですが、マイナ保険証の利用が困難な方はマイナ保険証を持っていても申請交付される運用が厚労省作成のチラシでも案内されています。2025年4月3日は後期高齢者全員(2000万人)に対してマイナ保険証保有の有無にかかわらず資格確認書を交付することを決めました。厚労省作成チラシ

これらの対応は、法律に基づかない対応ではなく、改正健康保険法(23年6月9日公布、24年12月2日施行)の附則(令和五年六月九日法律第四八号)第15条の規定に基づく措置です。マイナ保険証への強引な移行によるトラブル・混乱を防ぐため、医療現場や自治体など現場の実態を踏まえて柔軟対応されてきた経緯があります。

参考: 健康保険法 | e-Gov 法令検索

附 則 (令和五年六月九日法律第四八号) 抄

(健康保険法等の一部改正に伴う経過措置)
第十五条 保険者(健康保険法第四条に規定する保険者をいう。)は、第五条の規定による改正後の同法第五十一条の三第一項前段に規定する場合において、必要があると認めるときは、当分の間、同項の規定にかかわらず、職権で、被保険者に対し、同項後段の厚生労働省令で定めるところにより、同項の厚生労働省令で定める事項を記載した書面を交付し、又は当該事項を同項に規定する電磁的方法により提供することができる。

 

世田谷区長 「全員交付が合理的」

保坂展人世田谷区長は、東京新聞の取材に対して、「国保の保険者は区。区のシステムにマイナ保険証を取得した人を除外するシステムはない。92万区民の問い合わせに応じることを想定すると、全員に送付するのが合理的だと思う」とコメントしています(東京新聞5月15日報道)。

国民健康保険の「資格確認書」を渋谷、世田谷区が一律に発行へ 「マイナ保険証」トラブル懸念 東京新聞5月15日号

渋谷区や世田谷区の動きが広がれば、保険証を発行するのと同じことになり、法改正した意味がなくなってしまうため、国は望ましくないと考えていることを、大臣会見など表明しています。

しかし、国民健康保険の保険者は市町村(自治体)であり住民(被保険者)に対応するのは市町村(自治体)です。保険証有効期限前に混乱するのを防ぐため、資格確認一斉に送ったほうが、かえって行政コストも軽減されるとの判断するのは当然であり、市町村(自治体)の意向は尊重されるべきです。

福岡大臣会見概要 |令和7年5月16日|大臣記者会見|厚生労働省

記者

マイナ保険証についてお尋ねします。世田谷区、渋谷区は国民健康保険加入者に対して、マイナ保険証の保有有無を問わずに一斉に資格確認書を送付すると公表しました。厚生労働省の通知と相反する対応となりますが、厚生労働大臣としての受け止めをお願いします。

厚労大臣

世田谷区及び渋谷区が、マイナ保険証の保有状況にかかわらず、一律に資格確認書を交付する方針について報道があったことは承知しています。 資格確認書は、国民健康保険法上、マイナンバーカードでオンライン資格確認を受けることができない状況にある方に交付することとされています。この両自治体の詳細な取扱いについて、まずは事実関係を把握した上で、必要な対応について検討してまいりたいと考えています。