「OTC類似薬の保険除外やめて」 難病患者家族が8万5千筆の署名提出

負担激増で生活できぬ 難病患者家族が8万5千筆の署名提出

「命や生活を支える医薬品、ずっと使っている薬が、保険適用から外されるかもしれない」─。自民・公明・維新の会が6月11日に合意したOTC類似薬の保険適用除外が政府の「骨太方針2025」に盛り込まれた。OTC類似薬を使用する患者・家族から負担金額が増えることで「治療が続けられなくなるのでは」という不安や懸念も広がっている。

 

国の指定難病である魚鱗癬(ぎょりんせん)を患う大藤龍之助さんの母・朋子さんが6月18日、厚労省にオンライン署名約8万5千筆と請願書を提出し、治療を必要とする全ての人が使用する薬(OTC類似薬)を、今後も保険適用とすること求めた。署名には難病患者だけでなく、アトピー性皮膚炎や喘息、アレルギー疾患、がん患者からも賛同とメッセージが寄せられた。保団連は同署名と請願書に賛同するとともに、厚労省への署名提出に同席した。

「病気を恨むようになる」

大藤さんは、「息子は生まれつきの魚鱗癬で、22年間、四六時中のかゆみや痛みに耐えてきた。体温調整ができないことで、友達との行動が制限されることもあった。それでも2年前に今の会社の社長が息子を受け入れてくれたおかげで、病気があっても働くことができている。しかし、このOTC類似薬の保険外しで、息子の将来に不安しか見えなくなった。息子はこれまで病気を抱えていることに文句は言わなかったが、OTC類似薬が保険から外されたら、自分の病気を恨むようになると思う」と話し、OTC類似薬の保険適用の存続を訴えた。

2千円が13万円に

OTC類似薬が保険から外された場合、魚鱗癬(ぎょりんせん)を患う患者の負担はどうなるのか。大藤さんは実際にドラッグストアに行き、子どもが使用する薬価を調べた。「息子には全身の肌の乾燥や湿疹をフォローする塗り薬のヒルドイドや飲み薬のフェキソフェナジンが絶対に欠かせない。しかも全身に塗る薬で、どうしても大量になってしまう。また、皮膚が悪化した時にはリンデロンVGが必要になる。今、息子は2カ月に3回の頻度で病院に通っている。一回の診療代と薬代は2千~3千円。一回の処方薬をドラッグストアで買うと、通常の状態で6万円以上かかり、肌が荒れている時で約13万円かかることが分かった。これでどうやって生活していくことができるのか」と話した。

難病医療助成からも外される

厚労省の大坪寛子健康・生活衛生局長は6月18日の衆院厚労委員会で、「公的医療保険の給付対象外の費用は、公費負担医療の対象にはしていない」と答弁しており、難病医療助成制度の対象からも外される。国は患者の実態を直視し、保険適用の継続をすべきだ。