高額療養費制度の負担額引き上げに反対相次ぐ -在り方専門委員会

 高額療養費制度の見直しをめぐり社会保障審議会に設置された専門委員会で6月30日、患者団体などにヒアリングが行われました。

引き上げに反対する意見が相次ぐ一方、参考人や委員から「高額な医療費を使っている自覚がない」「医療制度に甘えている」など利用者に批判的な発言も繰り返されました。

引き上げで「静かな自殺」が増える

「慢性骨髄性白血病(CML)患者・家族の会 いずみの会」副代表の河田純一さんは、「分子標的薬の登場で健康な人と同程度の余命が得られるようになったが、薬剤費が高額なため、負担額の引き上げは命に直結する問題だ」と訴えました。
政府は当初、「多数回該当」のみ据え置く案を検討していました。これについても、副作用等による薬の減量で多数回該当から外れたり、負担上限額の引き上げで「多数回該当にぎりぎり届かない事例を増加させる恐れがある」と指摘しました。
同会の調査では、治療を続ける上で困ることは「経済的困難」が56%で最多となり、中でも40歳未満51%、40代37%、50代41%と若い世代で割合が高いそうです。
河田さんは「地域によっては処方日数が短く負担額に2~3倍の差が生じるケースもあり、現行制度でも問題が多い。引き上げになれば、治療中断、すなわち『静かな自殺』が増えることを強く懸念している」と話しました。
日本アレルギー友の会理事長の武川篤之さんは「疾患があるだけでも日常生活がつらいのに、経済的負担の増加は患者を追い詰める」と語気を強めました。
血液情報広場・つばさ理事長の橋本明子さんは、薬代が払えずに治療を断念した事例が複数あったことを紹介し、引き上げに反対する意見が重ねられました。

「高額薬剤を使っている自覚がない」

一方、ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子さんからは、自身も複数の癌に罹患した経験から「高額療養費制度の恩恵を受けてきた」としつつ、聞いた話として「現物給付により高額薬剤を使っている自覚がなく、医師も簡単に処方してしまう」「同制度の使用目的で留学している外国人がいる」などの発言もありました。

既に「破滅的支出」

山口さんの意見に対し、全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介委員は「がん患者は病気だけでなく治療費との闘いでもあった。そうした中で実現したのが現物給付であり、現状でも治療費が過剰で、WHOが定義する『破滅的支出』になっている患者がいる」と指摘しました。

「医療制度に甘えているのでは」

高齢社会をよくする女性の会理事の袖井孝子委員は「私たちは世界に冠たる日本の医療制度に甘えているのではないか。受益者意識が高くなって、もらえるものはもらわなくちゃ損だ、みたいな」と批判しました。
昨年12月に閣議決定された高額療養費制度の負担限度額引き上げ案については、患者・国民からの強い反発で「凍結」されました。当事者の意見聴取や生活実態の調査をせずに決定したことに批判が集中したため、患者団体代表を加えた「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」が設置されました。
保団連は患者・国民の受療権を阻害する運動の一環として改悪阻止、完全白紙撤回を求めて取り組みます。