
保険継続を求め要請・記者会見 13万筆の署名を提出
参院選で重要な争点の一つとなったOTC類似薬の保険外しは、今後具体的な検討が進められる見込みだ。全国保険医団体連合会(保団連)は7月10日、日本アトピー協会、難病患者の家族とともに記者会見を行い保険適用の継続を求めました。
会見に先立ち厚労省要請を実施し、日本アトピー協会の倉谷康孝代表理事は必要な薬の保険適用継続を求めるオンライン署名4万4130筆と要望書、難病「魚鱗癬」患者の母親である大藤朋子氏も、同趣旨の署名8万8343筆を提出しました。保団連の橋本政宏副会長からは、OTC類似薬の保険外し中止を求める要望書を提出しました。
要請と記者会見では、薬を必要とする患者さんの実態やセルフメディケーションの危険性などが語られました。それぞれの発言内容を紹介します。
痒がる子どもの看病に疲弊し心中も 倉谷氏
OTC類似薬の保険外しの話を聞いて頭に浮かんだのは、「アトピー患者さんの明日が怖い」という思いです。アトピー性皮膚炎は、24時間365日、痒くない時はありません。寝ている間にも無意識に掻いてしまい、翌朝にさらに悪化する日々を過ごしています。患者さんからは「気が狂うほどの痒さ」「死んだら痒さから解放される」との声が聞かれます。重症のアトピー皮膚炎による二次感染症で肺炎を起こし亡くなった人、両親が交代で一晩中痒がるわが子の背中をさすって疲弊し一家心中をされた人、自らの命を絶たれた人もいます。
慢性疾患であるアトピー性皮膚炎の治療に必要な薬の保険外しは、長期治療が必要な患者さんの莫大な経済的負担となります。治療が継続できないことも考えられる。到底受け入れることはできません。
一番の望みは 処方薬の保険適用 大藤氏
6月に記者会見でこの問題を訴えたにもかかわらず、参院選でOTC類似薬の保険外しを掲げる政党があり、強い危機感と不安を抱いています。
魚鱗癬を患う息子は朝晩、ヒルドイドやプロペトなどの保湿剤の塗布が欠かせません。悪化した時にはリンデロンVGや内服薬も必要になります。2024年7月から1年間に息子が支払った薬代は約3万円でした。OTC類似薬が保険から外された場合、試算では約82万円の負担となります。症状が悪化すればさらに負担は増え、薬代を節約すれば日常生活に大きな影響が出ます。息子が立ち上げた署名で、同じ状況にある人の悲痛な声が多く寄せられました。
息子の一番の望みは、これまでと同様の日常生活が送れるよう、医師が処方した薬に保険が適用されることです。薬代のために生活がままならない人が出ないよう、OTC類似薬は保険から外さないでほしい。
薬を買う力の有無が治療内容を左右 橋本副会長
OTC類似薬は医師が日常診療で処方している薬であって、処方箋医薬品と実質的に変わりません。軽症疾患だけでなく幅広く症状を緩和するために使われており、使用が日常生活の質に直結するため患者にとって非常に重要です。治療に欠かせない薬を保険から外してしまえば、薬を「買える力」の有無で患者の治療内容が左右されてしまいます。
「セルフメディケーション」では医師の診断を経ずに対症療法を行うため、重大な疾患が隠れていた場合、確実に症状が悪化する。疾患の見極めは医師でも難しく、病歴聴取、身体診察、検査所見から慎重に判断しています。必要なのはセルフメディケーションではなく、患者がかかりつけ医を受診、相談するためのハードルを下げることです。
この他、保団連の本並省吾事務局次長は、OTC類似薬の保険除外に関する各党公約を紹介し参院選の争点化を呼び掛けました。要請と記者会見のもようは、毎日新聞、東京新聞、テレ朝NEWS、TBS NEWS DIG、FNNプライムオンライン、日刊ゲンダイなどで報道されました。