【病院経営危機】築40年以上の病院が全国で1623件・27% 建築コスト上昇で老朽化対応や入院環境整備が困難に

保団連は、9月9日の厚労大臣記者会見で物価高騰、建築コストの上昇を受けて、老朽化した病院施設の建て替えが困難になっている現状を示し、病院経営の危機打開に向けた国の対策を質問しました。

福岡大臣からは、医療機関の建て替え等は「地域医療介護総合確保基金を通じて医療機関の施設整備等を支援」、足下の資材高騰を踏まえて「令和6年度補正予算による緊急的な支援」、物価高騰に苦しむ医療機関への支援は、「重点支援地方交付金の積み増しや福祉医療機構の融資の大幅な拡充」とこれまでの対策を示しました。

医療機関の倒産は過去最多ペース

帝国データバンクの医療機関によると2025年上半期の医療機関の倒産は35件となり、過去最多のペースで推移している。物価高や人件費などの高騰による収益悪化や経営者の高齢化、建物の老朽化などを背景に事業継続を断念する事業者が相次いでおり、2025年の倒産件数ははじめて70件に達する可能性があるとしています。内訳は「病院」が9件、「診療所」が12件、「歯科医院」が14件で、「病院」と「歯科医院」がそれぞれ過去最多(病院18件=2007年、歯科医院27件=2024年)に並ぶ水準で推移していると足元で医院経営危機が進行していることを示唆しています。

医療機関の経営危機を救うには国の対策は後追いで極めて不十分な対応と言わざるを得ません。診療報酬の期中改定、公的支援の抜本的強化が求められます。

 

 

福岡大臣会見概要 |令和7年9月9日|大臣記者会見|厚生労働省

保団連

少し前の報道になりますが、5月26日にNHKの調査で、法定耐用年数を超える築40年以上の病棟を持つ病院は全国で1,623、全体の27%に上り、その他築50年以上、築60年以上と、かなり病院全体の築年数が超えているという状態になっているということが調査で明らかになっています。しかし、多くの病院団体では、ご存じのとおり、かなり複数にわたって経営実態調査を基に窮状を訴えています。必要な入院環境整備というのが早急に求められると思いますが、老朽化していると。あと、これから感染防止対策やICT導入、さらには厚生労働省として進めている地域医療構想を伴う改築や病院の統廃合など、これらの実態の関係で統廃合すらできないという報道も出ています。これについて何か見解や方策の検討段階などがあればお聞かせいただきたいのと、もう一つ、一部の病院や有床診療所などにおいて、建築資材や建築業界の人件費の高騰で改築費用が高額になっている中、一部ではありますが、法外な見積り額を提示する業者や、悪質な施工を提供する業者がいるとの声も出ています。こういった実態についても何か対応策や検討状況などありましたらお聞かせください。

福岡大臣

これまでの会見でも再三申し上げてきたとおり、医療機関は物価高騰などの大変厳しい状況に直面しているということは認識しており、私自身も関係者の方々から様々なお声をお聞きしているところです。医療機関の建て替え等については、これまで、地域医療構想の達成に向けて、地域医療介護総合確保基金を通じて医療機関の施設整備等を支援するとともに、足下の資材高騰を踏まえて、令和6年度補正予算による緊急的な支援を行っているところです。先ほどご指摘があったように、建築コストの上昇に伴い、その上昇分等を補正予算等の中でみるという対応もさせていただいているということです。また、物価高騰に苦しむ医療機関への支援については、重点支援地方交付金の積み増しや福祉医療機構の融資の大幅な拡充といったことでも対応しているところです。今後、骨太の方針2025も踏まえて、今講じている施策の効果を把握しながら、次の診療報酬改定をはじめ必要な対応を検討してまいりたいと考えています。なお、建築現場の不正なことへの対応等については、建設業者への指導監督は建設業の許可を行う許可行政庁において対応されているものと承知しています。