若年がん患者 がん治療のため6割が休職 44.9%が金銭的負担【国立がん研究センター患者体験調査報告書令和5年度】

2025年9月17日

9月16日の厚労大臣記者会見で福岡厚労大臣は、高額療養費の見直し専門委員会の検討にあたり「患者の方々の経済的な負担が過度なものとならないよう配慮しつつ、一方で増大する高額療養費を負担能力に応じてどのように分かち合うかという観点から、引き続き丁寧に検討を進めてまいりたい」と答弁しました。

 

福岡大臣会見概要 |令和7年9月16日|大臣記者会見|厚生労働省

若い世代、進行がんの影響評価を

9月16日に開催された第4回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」ではがん治療による経済的負担の影響に関する資料として厚労省委託研究である国立がん研究センターの調査「患者体験調査報告書令和5年度調査(n=11,169)」が提出されました。同調査報告書では、現行の高額療養費制度においても、がん患者において治療費を含めた経済的な負担が生活全般や患者を取り巻く人々にも影響を及ぼしていることが示されました。同報告書の回答者の特性として、主要ながん種の患者が回答しており、ステージⅠ(46.1%)、ステージⅡ(19.9%)、ステージⅢ(15.4%)ステージⅣ(13.6%)の回答者が分布しています。

同調査報告書を元に高額療養費の限度額引き上げによる治療への影響などを評価する際には、若年がん患者(AYA世代)、一般がん患者、進行がんの患者などより深刻な結果が出ることが想定されます。こうした影響が著しいと推定される階層に分類した影響評価も実施すべきです。

保団連が子どもを持つがん患者を対象に実施した実態調査では、がん治療の性質上、がん罹患後の収入減少、治療費全般の支出なども把握し、限度額引き上げに伴う子育て・養育への影響を可視化しました。患者の経済的破綻、治療中断を招く高額療養費の限度額引き上げは白紙撤回すべきです。

資料 患者体験調査報告書令和5年度調査

若年がん患者 約8割が就労、休職・休業は6割 退職・廃業は2割

国立がん研究センターの調査では、若年がん患者とは、AYA 世代のがん患者として18歳以上40歳未満の患者を分類して分析しています。

※AYA世代は一般的に15~39 歳と定義されているが、調査報告書では調査の設計上18~39歳を対象としている。

若年がん患者について、診断時に就労していた人は一般がん患者では42.9%に対して、若年がん患者では78.6%と比較的に多くなりました。また、若年がん患者では、診断時に就労していた人のうちがん治療のため休職・休業した人は63.6%、退職・廃業した人は18.8%でした。

若年がん患者の金銭的負担で影響 44.9%

「経済的困難」に関する問22「金銭的負担が原因で何らかの影響を受けた人」を見ると、若年がん患者では、何らかの影響を受けた人が44.9%と他のグループよりも高い傾向にあります。親戚や他人から金銭的援助を受けた人は16.6%、患者本人が仕事を続けざるを得なかったり転職せざるを得なかった人は12.0%、収入を増やすために家族が働くようになった人が4.7%ありました。特に若年がん患者において、治療費を含めた経済的な負担が生活全般や患者を取り巻く人々にも影響を及ぼしています。全体では、金銭的負担が原因で影響を受けた人は24.2%。その内容は、長期貯蓄を切り崩した人の16.5%に次ぎ、日常生活の食費や衣料費を削った人は6.8%と続きました。

 

参考資料

「高額療養費制度」上限引き上げに伴う家計・子育てへの影響調査(最終報告) – 全国保険医団体連合会