8月の国保保険証切り替えで混乱なし 市町村の実態と乖離
福岡資麿厚労大臣は9月30日の記者会見で、8月に国保の保険証が切り替わったことについて、「大きな混乱はなかったと認識している」と述べました。しかし、8月28日の社会保障審議会医療保険部会では、全国市長会相談役の前葉泰幸委員が「(市町村窓口への)国保に関する問合せの3割程度は資格確認書等に関するもの」など事務負担増を報告しています。現場は多様な資格確認方法の出現に困惑しており、大臣の発言は市町村の実態と乖離しています。
マイナ保険証利用は微増 要因は資格確認書一律交付?
また、8月のマイナ保険証利用率が前月比2.89%の微増となった要因を問われ、大臣は「後期高齢者医療制度の加入者に資格確認書を一律交付している影響もある」と答弁しました。
7月末には多くの国保加入者と後期高齢者の健康保険証が有効期限を迎えましたが、8月の利用率は34.32%と低調でした。答弁によれば、7月末に保険証の有効期限を迎えた自治体におけるマイナ保険証利用率は7月から8月にかけて約10%増加した一方で、後期高齢では約0.4%増にとどまりました。しかし、後期高齢者の多くが資格確認書で受診しているのは、マイナ保険証の利便性が国民に浸透していないからにすぎません。
医療機関でトラブル継続 回避策は資格情報記載書類による確認
医療機関で発生するオンライン資格確認のトラブルは解消されていません。千葉県保険医協会の調査では、8月以降に9割超の医療機関で何らかのトラブルが発生し、72%が保険証、68%が資格確認書で対応したとの結果が出ました。これはトラブルに対して、券面に資格情報が記載された書類での対応が有用であることの証左です。
国保加入者のマイナ保険証利用が増えたとしても、トラブルが解消されない以上、資格情報を券面で確認する必要があります。資格確認書の一律交付も一定の意義を果たしています。根本的な解決には保険証の復活が不可欠です。
被用者保険対応 保険証復活と資格確認書全員交付は否定
今年12月1日には被用者保険の健康保険証が有効期限を迎えます。会見で保団連は、12月2日以降の混乱回避に向け、保険証復活や資格確認書の全員交付といった対応の是非を問いました。福岡大臣は「(復活や一律交付は)考えていない」とした上で、医療機関での受診に混乱が生じないことは重要だと答弁。有効期限切れの保険証を使い続けられる『暫定措置』を被用者保険にも適用することについては、「適切に対応していく」と述べました。今後の動向に注視が必要です。
保団連:
マイナ保険証に関して2点質問させていただきます。1つは、7月末で国保加入者が1,700万人、後期高齢者が2,000万人、健康保険証の有効期限を迎えましたが、8月のマイナ保険証利用率が34.32%ということで、前月比2.89ポイントの増にとどまりました。微増にとどまった要因というのはどのようにお考えでしょうか。2点目として、千葉県保険医協会の調査では、8月以降に9割超の医療機関で何らかのトラブルが発生して、72%が健康保険証、68%が資格確認書でトラブル対応しており、券面に資格情報が記載された書類の有用性が示されたと考えています。12月2日に被用者保険の保険証も使えなくなりますが、保険証復活や資格確認書の全員交付が必要ではないでしょうか。また、あるいは、12月2日以降のトラブルを防止するために、期限切れ保険証でも資格確認を可能とするような暫定措置を被用者保険にも適用すべきではないでしょうか。
大臣:
8月のマイナ保険証の利用率については、全体では34.32%であり、対前月比で約3%弱の増加にとどまったのではないかというご指摘でした。国民健康保険においては7月末に保険証の有効期限を迎えた自治体の利用率は7月から8月にかけて約10%増加しています。一方で、後期高齢者の医療制度については約0.4%の増加にとどまっていますが、これは後期高齢者制度の方には資格確認書を一律に送付している影響もあると受け止めています。今後も国民健康保険において順次保険証の有効期限を迎える自治体があるため、引き続きマイナ保険証への円滑な移行に向けて、医療機関の受診方法等について丁寧に周知を進めていきたいと思います。そして後段の質問については、マイナ保険証は、確実かつ電子的な本人確認のもと、本人の健康・医療情報を活用したより良い医療の提供に大きく寄与するものであるということは、これまでも再三申し上げてきたところです。従来の保険証や資格確認書を一律に交付するということは考えていません。一方で、医療機関等で円滑に受診できるということは大変重要であると考えており、8月の大多数の自治体での国民健康保険の保険証の切り替えでは大きな混乱はなかったと認識していますが、ご指摘があった12月の被用者保険の保険証の切り替えについても、適切に対応を進めてまいりたいと思います。
保団連:
適切に対応するということで、以前お聞きしたのが、暫定措置の事務連絡が出たときに関連して、厚生労働省の担当課の方が健保連に対して、今回のような事務連絡は今後出さないということを小耳に挟んだのですが、こういうことは事実ではない、今後適切な対応を考えていくということでよかったでしょうか。
大臣:
今おっしゃったやりとりについて私自身把握しておりませんので、そのことについてのコメントを申し上げることはできません。今後の被用者保険の切替え等も含めて、適切に対応してまいりたいと思います。