保団連は10月17日の厚労大臣記者会見で①診療報酬による消費税補塡分の集計に誤り(10/8中医協で報告)について「集計の誤りは重大」、「控除対象外消費税への複雑な対応が招いたもの」「診療報酬で補塡するというやり方自体の限界を示している」と指摘するとともに、ゼロ税率の適用などの抜本的な対応を求めました。
社会保険診療は社会政策的配慮から消費税が非課税とされています。また、診療報酬は公定価格とされており、医療機関が消費税分を患者に転嫁することができません。そのため、医療機関が設備投資や医療機器、医療資材の購入に伴う経費部分に含まれる消費税は医療機関の持ち出しとなっています。これが、控除対象外消費税、いわゆる「損税問題」です。
「損税問題」への対応としてこの間、厚労省は、仕入れ相当分を診療報酬による補填する形で対応してきました。
しかし、仕入れ相当分の金額はあくまで平均的な経費率に掛かる診療報酬の補填に過ぎず、すべての医療機関に対して十分な補填がされることを保証するものではありません。とりわけ、消費税負担は経費の額が大きい病院経営を直撃しており、経営破綻の一因となっています。
10月8日中医協総会で、診療報酬による消費税補填分の集計に誤りがあったことが報告されました。保団連は、10月17日の大臣会見で「集計の誤りは重大」、「控除外対象消費税の対応として診療報酬で補填するやり方自体の限界を示している」、「ゼロ税率の適用を含め、診療報酬の補填以外の抜本的な対応を検討すべきではないか」と指摘しました。
これに対して、福岡厚労大臣は「10月8日中医協で令和2年度から4年度における消費税負担の補填状況について過去に公表した数値の修正を行った。本件について私からもおわびを申し上げる」と謝罪した上で「今回、修正した補填率の調査結果では、全体の補填率が令和3年度は102.2%、令和4年度は98.9%であったという修正後の結果が示された」と報告しました。
早急に診療報酬の引き上げを
保団連は、「修正後のデータでは、令和4年度分は、医科・歯科ともに補てん率が100%を下回っている。令和6年の診療報酬改定では消費税分の上乗せはされていないため補填不足になっており、医療機関の窮状を招いている。次回改定を待たずに、早急に診療報酬の上乗せなど手当が必要ではないか」と指摘しました。
福岡厚労大臣は、「中医協では診療側および支払側からさまざまなご意見があったと聞いている。引き続きこの点についてはご議論いただくものと考えている」と答弁しました。
また、抜本的解決としてのゼロ税率の導入について、「社会政策的な配慮に基づき非課税とされているその他のサービスへの影響や消費税の還付による国の財政状況への影響などの課題がある」と答弁しました。
福岡大臣会見概要 |令和7年10月17日|大臣記者会見|厚生労働省
- 保団連
- 消費税の補塡についてお伺いします。10月8日の中医協総会で、診療報酬による消費税補塡分の集計に誤りがあったことが報告されました。集計の誤り自体重大ですが、このことは控除対象外消費税への対応として、診療報酬で補塡するというやり方自体の限界を示しているのではないでしょうか。ゼロ税率の適用を含め、診療報酬の補塡以外の抜本的対応を検討すべきではないでしょうか。また、修正後のデータでは、令和4年度分において、医科・歯科ともに補塡率が100%を下回っています。令和6年度の診療報酬改定では消費税分が上乗せされていないため、補塡不足になっており医療機関、特に病院を中心に窮状を招いていると思います。次回改定を待たず、早急に診療報酬の上乗せなどの手当が必要ではないでしょうか。
- 厚労大臣
- 10月8日の中医協において、令和2年度から4年度における消費税負担の補塡状況について、過去に公表した数値の修正を行ったところです。この点については、私からもお詫び申し上げます。今回修正した補塡率調査結果においては、全体補塡率が、令和3年度は102.2%、令和4年度は98.9%であったという修正後の結果などが示されたところですが、これについては、中医協の場において、診療側及び支払側から様々なご意見があったと聞いており、引き続きこの点についてはご議論いただくものと考えています。また、ご指摘のあったゼロ税率を導入することについては、社会政策的な配慮に基づき非課税とされているその他のサービスへの影響や消費税還付による国の財政状況への影響といった課題があると考えているところです。