
自民党・維新の会の連立政権は11月21日、2025年度補正予算に関する総合経済対策の閣議決定において「特に、OTC類似薬を含む薬剤自己負担については、現役世代の保険料負担の一定規模の抑制につながる具体的な制度設計を令和7年度中に実現した上で、令和8年度中に実施する。」と明記しました。
補正予算編成での経済・物価対策と同列に薬の自己負担を増やす施策を明記したことは前代未聞です。多くの患者・国民の健康・社会生活に影響する薬剤給付の自己負担を当事者の意見、実態や健康、社会生活への影響を一切明らかにしないまま、結論ありきで閣議決定したことに強く抗議します。
患者影響アンケート(回答数:1万2301人)からも明らかなように解熱・鎮痛剤、咳止め、たん切り、抗アレルギー薬、湿布、保湿剤など辛い症状を取り除く医療用医薬品(OTC類似薬)は、急性疾患、慢性疾患、重症疾患などさまざまな患者の治療継続や症状を緩和・安定させるために使用している欠かせない薬です。
保険除外で薬剤費が20倍から30倍に
OTC類似薬が保険適用から外された場合、薬剤費が20倍から30倍に増加し、必要な薬が使えなくなります。また、難病患者、子ども、子育て世代、高齢者など幅広い年代や立場の患者が利用しており、子ども医療費や難病公費、高額療養費など公費支援制度にも大きく影響します。
国民の多くが健康で社会生活を過ごすのに不可欠な薬を保険給付から除外したり、3割の医療費窓口負担金とは別に、追加負担を求める新制度を導入することは、物価対策に反するばかりか、その薬がないと日常生活が送れない療養中の患者に対する「いやがらせ=ペナルティー」でしかありません。
自維連立政権は、薬の自己負担増で医療費抑制と社会保険料引き下げを掲げていますが、OTC類似薬の医療費総額(24年度、48兆円)に占める割合は最大でも2%(7000品目、1兆円)であり、医療費増額の要因とする根拠はありません。
誰も喜ばない、患者・国民を不幸に陥れる愚策
日本維新の会が4月17日の3党協議で提案した28有効成分のリストの薬剤費総額は1523億円、国民一人当たりの保険料だと年間でも1200円程度です。一方で、日本アトピー協会が試算したアトピー性皮膚炎の患者の負担増額は月額で約1万円、年間で12万円の薬剤負担増となります。薬価が低く抑えられている後発医薬品の多くが該当するOTC類似薬の保険除外は薬剤費の抑制という点でもマイナスでしかありません。
自維連立政権は、薬剤費の大部分を占める新薬、高額薬剤には踏み込んでない上、大企業の優遇税制を是正し応分の負担を求めるなどで財源を確保し、医療給付に対する公費支出を増やし、社会保険料の上昇を抑制するという選択肢も除外しています。「改革」と称して患者・国民に痛みを押し付けているだけです。誰も喜ばない、患者・国民を不幸に陥れる愚策は直ちに撤回すべきです。


