自民党と維新の会は11月21日にOTC類似薬の保険給付の在り方について政策協議を行いました。
協議の中ではOTC類似薬を含む保険給付について「OTC医薬品を購入する方との公平性や保険財政の持続可能性の観点から一定の負担を求める見直しを行う」などの考え方が示され、その考え方に沿って患者に負担を求める3つの案(①薬価削除、②保険給付外、③保険外併用療養)が示されました。
市販薬購入との比較は不適切
OTC医薬品とは市販薬のことです。市販薬(OTC薬)はドラックストアで購入できるため、医療機関を受診・問診・検査などによる鑑別診断や医師が発行する処方箋も必要ありません。また、市販品は誰でも購入できるため「OTC医薬品を購入する方」は患者である必要もありません。また、自覚症状はあるが、OTC医薬品を自己判断で購入、服薬される方は、本来であれば、自覚症状が出たら早期受診が必要ですし、全国民がいずれかの医療保険制度に加入しているため、医療機関に受診し、医薬品(OTC類似薬)を処方してもらうことは可能です。つまり、OTC医薬品を購入する方と医療機関でOTC類似薬を処方される方の比較そのものが不適切です。
仕事が忙しく医療機関を受診する暇がないなどの理由で、市販薬を購入する方には、早めの受診勧奨を促すなど別途の対応が必要であり、自己判断による服薬は重大疾患の見逃しなど健康リスクが伴います。
また、「保険財政の持続可能性」を理由にしていますが、OTC類似薬は最大でも7000品目、1兆円と言われていますが、2024年度概算医療費(48兆円)の2%に過ぎません。その多くが後発医薬品です。政府は医療費抑制、薬剤費抑制のため後発医薬品の使用割合を増加させる施策を続けてきました。OTC類似薬を使えなくすることは、保険財源をかえって悪化させる可能性すらあります。
3割負担に加え追加料金 薬剤一部負担金は「二重払い」そのもの
OTC類似薬の保険給付の在り方を巡り、上野厚労大臣は11月20日の参議院厚労委員会審議で「薬剤一部負担金」などさまざまな観点から議論があると答弁しました。
薬剤一部負担金は患者の追加負担を求める声が強く1997年に導入されたものの2003年に廃止された制度です。窓口負担金に追加して1日当たりの追加負担金額が設定されるため、薬の種類が多いと負担金額が多くなる仕組みです。受診時に数種類の薬を処方されている患者、低所得の患者には重たい負担となり外来受診抑制が生じました。薬剤一部負担金制度を復活させた場合、窓口負担金3割とは別に薬剤の一部負担金が課されるため「二重払い」となります。
国民の多くが健康で社会生活を過ごすのに不可欠な薬を保険給付から除外したり、3割の医療費窓口負担金とは別に、追加負担を求める新制度を導入することは、受診抑制を招き治療継続に支障が出ます。その薬がないと日常生活が送れない療養中の患者に対する「いやがらせ=ペナルティー」でしかありません。
OTC類似薬を巡り、対象疾患や対象薬剤を限定するなどの議論もありますが、かなり複雑な制度になることは間違いなく、配慮された患者と配慮されなかった患者との分断・軋轢を招きます。配慮されない患者も相当数いることが想定されるので、物価高騰で厳しい家計に追い打ちとなります。
2002年の健康保険法改正で「保険給付率は将来にわたり7割給付を維持する」ことが明文化されました。窓口負担とは別に徴収する薬剤一部負担の復活は違法行為そのものです。


