【12月4日】OTC類似薬の保険適用継続を 厚労省に21万筆の署名提出

2025年12月12日

 自維連立政権は処方薬の一部(OTC類似薬)を含む薬剤自己負担増の26年度からの実施に向けて、25年末までに連立政権合意の具体化の検討を加速化させています。全国保険医団体連合会(保団連)は、12月4日に厚労省要請を実施し、薬剤自己負担増の閣議決定の撤回とOTC類似薬の保険適用継続を求めました。日本アトピー協会、難病患者、大阪協会など3団体が取り組んだ21万筆の署名を厚労省に提出しました。

 

閣議決定は撤回を

保団連の竹田智雄会長は「多くの患者・国民の健康・社会生活に影響する薬剤給付の自己負担を当事者の意見、実態や健康、社会生活への影響を一切明らかにしないまま、結論ありきで閣議決定した」と厚労省に強く抗議しました。

その上で、「国民の多くが社会生活を過ごすのに不可欠な薬を保険給付から除外したり、3割の医療費窓口負担金とは別に、追加負担を求める新制度を導入することは、薬がないと日常生活が送れない患者に対するいやがらせでしかない」「『改革』と称して患者・国民に痛みを押し付けている。誰も喜ばない、患者・国民を不幸に陥れる愚策は直ちに撤回すべきだ」と政府方針の撤回を求めました。

「薬代が高くなる」8割

1万2千件の回答が寄せられた患者影響アンケートは、20代から60代の現役世代からの回答が84・9%だった。約90%が「OTC類似薬の保険外しに反対」、84・9%が「薬代が高くなる」、62%が「自己判断で購入する」と回答しました。

自由記述欄には7295件の書き込みがあり、「飲み合わせによる副作用が心配」「ただでさえ生活が困窮しているのに医療費の負担が増えたら生活ができない」など不安な声が多数寄せられました。

OTC類似薬が、急性疾患、慢性疾患、重症疾患などさまざまな患者の治療継続や症状を緩和・安定させるために使用されていること、医師の判断の下で薬を使い、痛みや不快感などの症状をやわらげ、生活を維持している人も多くいることが分かりました。

患者追加負担は ペナルティー

難病「魚鱗癬(ぎょりんせん)」患者の母親である大藤朋子氏は、「3割の医療費窓口負担とは別に追加料金を患者に求める案も検討されているが、患者も社会保険料も窓口負担も負担している。その上での追加負担は『ペナルティー』そのものであり、この物価高の中で生活苦を広げていくことは明らか。疾患の種類や所得金額などでの線引きは社会保障の概念から許されない。社会保険料を引き下げるために社会保障の予算を削るということ自体が間違っている。必要な医療や介護、生活の保障を受けることができず、結果として生活が立ち行かなくなってしまう。治療のために薬を使っている人たちの未来を奪わないで」と訴えました。

アトピー患者の治療薬を奪わないで

アトピー協会代表理事の倉谷康孝氏は「アトピー患者の約95%は、中等症から軽症で治療法はステロイド外用薬や保湿剤しかない。毎日欠かさずステロイド外用薬や保湿剤を重ね塗りし、抗アレルギー薬や点鼻薬、点眼薬なども使用しており、すべてOTC類似薬だ。アトピー性皮膚炎は、現状、完治しうる治療法はないが、外用薬、保湿剤を毎日続ければ、フルタイムで働くことができる。アトピー患者を含む全ての患者から毎日必要な治療薬を奪わないで」と訴えました。

市販薬服用で  不幸な結果に

「風邪薬を飲み続けていた40歳の女性が受診時には心筋炎を起こし、心不全になり、3年後には亡くなった」「頭痛で痛み止めを服用していた若い女性患者が髄膜炎になり、数年後に亡くなった」

大阪協会の高本英司氏は薬局で購入した薬を飲み続けたて不幸な結果となった事例を報告。患者の命と健康を守る医師の立場から保険適用継続を強く求めました。さらに、高本氏は「『なぜ保険ではこんなに安いのに、薬局に行けばこんなに高くなるのか』と患者から聞かれても説明できない」、「患者を診察し、治すことが医師の第一目的だ。薬の値段の説明で時間が取られてしまう」と医療現場の混乱を懸念しました。

身体の不調を抱えて仕事に出れない

東京土建一般労働組合の石村英明氏は組合員を対象に実施したアンケート結果を報告しました。「建設労働は、重量作業、屋外作業、粉じん・化学物質曝露、長時間労働・不規則労務といった身体負荷が極めて大きい産業だが、アンケートでは、筋骨格系疾患や呼吸器疾患を抱える人が多く、身体的な不調を抱えて現場に入ることは仕事に支障を来す」と報告。「腰痛でロキソニンや湿布、花粉症でアレジオン・点鼻薬、 皮膚炎でヒルドイド・リンデロンは、働くために必要な薬だが、薬が買えなければ、仕事に支障を来し、休業で収入低下という悪循環が生じる」と訴えました。