

厚労省は、12月15日の高額療養費制度の在り方に関する専門委員会で「高額療養費制度の見直しの基本的な考え方」を取りまとめました。
とりまとめ文書では、「現行の高額療養費制度の所得区分は、年収約370万円の方と年収約770万円の方が同じ区分に整理され、限度額も同じ取扱いとなっている。その上、所得区分が1段階変更となるだけで限度額が2倍程度に増加するなど、あまりにも大括りな制度になっている」とし、「応能負担の考え方を踏まえた制度設計という観点からは改善の余地がある」としました。
しかし、実際の制度設計では、一人当たり医療費の伸びを念頭に一律に引き上げた上で、現行の4区分をそれぞれ3つに分けて、上位2区分の限度額を現行の限度額より引き上げるイメージが示されています。
全所得区分で負担増
とりまとめ文書では、「現在の限度額から著しく増加することのないよう、応能負担の考え方とのバランスを踏まえた適切な金額設定とすべき」と引き上げ幅を抑える考え方が示されていますが、一律の引き上げや所得区分の細分化は「すべての所得区分の限度額引き上げ」でしかありません。応能負担は企業や所得に応じた社会保険料負担にこそ適用されるべきです。療養を余儀なくされた患者に応能負担を求めることは疾病給付や社会保険の概念とも相いれないものです。
内部留保を積み上げている大企業にこそ応能負担を求めるべき
10月22日の専門委員会で日本経団連の井上委員が、「自民党と日本維新の会の連立合意書で、現役世代の保険料負担軽減が重要だと示されており、高額療養費制度も医療保険制度改革の項目の一つとして一定程度見直すべき」と発言し、患者に応能負担を迫りました。空前の円安と物価高騰で大企業を中心に空前の利益を積み上げています。法人企業統計によると企業の内部留保は2022年には550兆円を超え、2023年度は600兆円まで積み上がりました。
保団連は、厚労大臣の記者会見で「連立合意書の改革項目には高額療養費の見直しは含まれているか否か」「経団連が能力に応じた負担と言うのであれば、過去最高の内部留保を積み上げている大企業にこそ応能の負担を求めるべきではないか」と指摘してきました。
物価高騰、実質賃金が低下する中、限度額引き下げこそ実施すべき
異常な物価高騰が続き、実質賃金も低下し続ける中で、高額療養費を利用せざるを得ない重症疾患を抱える患者・家族の医療費負担は以前より重くのしかかっています。また、高額療養費を利用する患者は、病気で休業や就労制限を余儀なくされる傾向にあり、所得の減少や貯蓄の取り崩しなど厳しい家計のやりくりを余儀なくされています。多数回該当の据え置きや現役世代への年間上限の新設、200万未満の所得区分での多数回該当の引き下げなど低所得・長期療養者への配慮措置は重要です。同時に一律引き上げや所得再分化による限度額引き上げは撤回し、すべての所得区分の限度額引き下げこそ実施すべきです。
【高額療養費制度の見直しの基本的な考え方・年齢にかかわらない応能負担に基づく制度の在り方】
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001611471.pdf
現行の高額療養費制度の所得区分は、年収約370万円の方と年収約770万円の方が同じ区分に整理され、限度額も同じ取扱いとなっている。その上、所得区分が1段階変更となるだけで限度額が2倍程度に増加するなど、あまりにも大括りな制度になっていると言わざるを得ず、応能負担の考え方を踏まえた制度設計という観点からは改善の余地がある。
そのため、所得区分を細分化(住民税非課税区分を除く各所得区分を、例えば3区分に細分化)し、所得区分の変更に応じて限度額ができる限り急増又は急減しないようにする制度設計とすることが適当である。
その際、例えば年収約400万円の方と年収約750万円の方であれば、現在は同じ限度額となっているが、応能負担の考え方によるならば、所得区分の細分化によって年収約750万円の方の限度額は相対的に大きく増加することになるものの、他方で、現在の限度額から著しく増加することのないよう、応能負担の考え方とのバランスを踏まえた適切な金額設定とすべきである。
2025年1月に提案された前回の改悪案



