【12月23日厚労省要請】高額療養費の限度額引き上げ撤回を求めます

2025年12月22日

2025年12月23日

 

厚生労働大臣 上野賢一郎 殿

 

高額療養費制度の限度額引き上げ撤回を求めます

 

全国保険医団体連合会

子どもを持つがん患者 水戸部ゆうこ

 

厚労省は、12月15日、高額療養費制度の在り方を検討する専門委員会で取りまとめを行い、多数回該当の据え置きや現役世代への年間上限額の新設、200万未満の所得区分での多数回該当の引き下げなど低所得・長期療養者への配慮する一方で、全所得区分を対象に来夏に自己負担限度額を一律引き上げた上で、現在の所得区分(4区分)を13区分に細分化し、限度額を引き上げることを決めました。

引き上げの論拠は「高額療養費制度を取り巻く上記の課題や将来への制度の継承を確かなものとするためには、近年の医療費の伸び等に一定程度対応した形での自己負担限度額の見直しを行っていく」というものです。

今年3月に多くの患者・国民の反対を受けて高額療養費の限度額引き上げを凍結しましたが、今般の引き上げ提案を受けて「当事者の声を聞くということだったが、文字通り『聞いた』だけだったのか」と怒りの声が上がり、限度額引き上げ撤回を求めるオンライン署名が17万筆に到達するなど反対の声が急速に広がっています。

 

応能負担は治療断念につながる

 

物価高騰で実質賃金が低下する中で、高額療養費を利用せざるを得ない重症疾患を持つ患者の医療費負担は家計を逼迫させ続けています。また、高額療養費を利用する患者は、病気で事業の休業や就労制限を余儀なくされており、所得の減少や貯蓄を取り崩して何とか治療費を捻出している状況にあり、金銭的な余裕はまったくありません。

また、現行所得区分の限度額も高すぎて利用できない状況にあり、健康な時の所得区分を重症疾患患者に適用することは治療中断に追い込むことになります。

1回から3回までの限度額が引き上げられると月ごとの医療費が限度額に到達せず、多数回適用も困難となり、長期療養者には重い負担になります。

 

現役世代のリスクも増大、少子化に拍車

 

応能負担は企業や所得に応じた社会保険料負担にこそ適用されるべきです。重症疾患の患者に応能負担を求めることは治療中断による重症化や生命の危機を招くだけであり、疾病給付や社会保険の概念とも相いれません。

「現役世代の保険料負担軽減」も根拠の一つとしていますが、保険料負担軽減は公費投入で解決すべき課題です。制度の持続可能性を維持することを以って、限度額を引き上げると、大病を患っても実際には利用できない制度となり、現役世代のリスクが増大することになります。特に、子どもを持つがん患者にとって、「命綱」である高額療養費制度が使えなくなることは、子どもを産み育てることそのものが「リスク」というメッセージと捉えられ、少子化に拍車をかけることになります。

高額療養費制度の自己負担限度額の一律引き上げや所得区分細分化による限度額引き上げは撤回し、すべての所得区分の限度額引き下げこそ実施すべきです。