

石破茂首相が2025年3月に凍結した高額療養費制度の限度額引き上げが、高市政権で凍結が解除されます。2026年8月からの高額療養費制度の限度額引き上げ案が26年度予算に盛り込まれました。
保団連は、厚労大臣記者会見(26年1月9日)において、高額療養費の限度額引き上げに伴う保険料軽減効果はわずかであり、税・保険料の上振れ分を活用すれば限度額引き上げは中止できると述べ、上野賢一郎厚労大臣の引き上げ見直しを迫りました。上野大臣は高額療養費の限度額引き上げ(負担増)で2026年度予算では、保険料軽減効果は700億円であると説明。その上で「制度の持続可能性を確保するために見直しは必要」との考えを繰り返しました。
制度を維持する財源はある
保団連や医療関係団体が、医療・介護の危機打開に向けて、物価・賃金の上昇に見合う診療報酬・介護報酬の引き上げ求めてきました。政府は、こうした医療界の強い要求を受けて、2026年予算でインフレ・賃上げ対応として診療報酬・介護報酬を5900億円確保しました。この間の物価高騰、賃上げに伴い、税収や社会保険料収入は大幅に増加しています。これらの財源を活用しました。一方で、高額療養費など社会保障給付を1700億円(保険料部分)削減します。
1月9日の記者会見で上野賢一郎厚労大臣は高額療養費制度について「極めて重要なセーフティネットである高額療養費制度を将来にわたって堅持していく」とする一方で「今回の見直しによって、主に療養期間が短期の方を中心に、追加のご負担をお願いすることは事実」と負担増を認めましたが、今回の見直し案では、26年、27年と2年間ですべての所得区分において自己負担限度額が引き上げられ、最大38%の負担増となります。年4回以上利用の多数回該当者は限度額が据え置かれますが、年1回から年3回の制度利用者約660万人が対象となります。対象者は、外来特例を除く制度利用者全体(821万人)の8割に相当します。
国民一人あたりの保険料軽減は月額49円に過ぎない
政府は現役世代の保険料負担の軽減のために社会保障給付を削減する方針を掲げています。上野大臣は、高額療養費の限度額引き上げ(負担増)に伴う保険料軽減効果について「高額療養費の給付削減で26年度は700億円の保険料が下がる」と説明しました。700億円は国民一人あたりにすると年間583円、月49円と保険料軽減効果もわずかです。
医療、介護の提供体制を維持することは極めて重要ですが、がんなど重症患者が高額療養費制度を利用できなくなる、医療が受けられなくなる事態が生じてはまったく意味がありません。診療報酬・介護報酬の引き上げと同様に税収や社会保険料収入の上振れ分の一部を活用し、全世代に重要なセーフティネットである高額療養費制度も現状維持することは可能です。
凍結がわずか1年で解除 問われるのは命の切り捨てる政治のあり方
石破首相が25年3月に凍結した高額療養費制度の限度額引き上げからわずか1年。高市政権が凍結を解除し、限度額引き上げを予算案に盛り込みました。国民の命・健康を守るセーフティーネットを守るのかそれとも切り捨てるのか政治のあり方が大きく問われています。
上野大臣会見概要 |令和8年1月9日|大臣記者会見|厚生労働省
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保団連
- 4月から開始される子ども・子育て支援制度の実質負担についてご質問させていただきます。こども家庭庁等は拠出金制度をスタートしましたが、実質負担を抑えるために社会保障給付を削るということでホームページで説明していますが、今回厚生労働省の令和8年度予算で、保険料換算で1,700億円の給付削減が実施されると承知しています。うち、高額療養費の限度額引上げによる給付削減はいくらになるでしょうか。子育て世代を含む660万人が自己負担限度額の引上げの対象になるかと思いますが、実質的負担という点では増しているのではないかという点についてご見解をお伺いします。最後に、物価上昇、賃上げ分の対応として確保された診療報酬・介護報酬の5,900億円は、いわゆる税・社会保険料の上振れの財源で対応したと説明されています。また、その5,900億円は実質的な保険料の負担としないことが大臣合意として確認されています。であれば、税・社会保険料の上振れで全世代に重要なセーフティネットである高額療養費制度も現状維持することができなかったのでしょうか。
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上野賢一郎厚労大臣
- まず、今般の高額療養費制度の見直しについては、医療費全体が増加する中で、高額な医療を必要とする場合の極めて重要なセーフティネットである高額療養費制度を将来にわたって堅持していくという観点から行うこととしたものです。この見直しによる保険料への影響については、令和8年度では約700億円の減と想定しています。なお、今回の見直しによって、主に療養期間が短期の方を中心に、追加のご負担をお願いすることになります。これは事実ですが、一方で、多数回該当の金額を維持した上で、患者団体の方々から特に強い要望のあった年間上限の仕組みを新設することとしています。また、年収200万円未満の課税世帯の多数回該当の金額を引き下げるなど、特に長期療養者や低所得者の経済的負担に配慮した見直しとしているところです。医療現場、介護現場それぞれで様々な課題を抱える中で、今般、必要な賃上げや物価対応に資するための改定率を確保したところですが、国民皆保険制度を将来にわたって堅持していくためには、やはり制度全体についても不断の改革が必要だと考えています。今回の見直しもその一環だと考えていますが、制度の持続可能性という観点だけではなく、繰り返しになりますが、年間上限を新設するなど長期療養者に対するセーフティネット機能を一層強化したものとしているので、引き続き、こうした趣旨を丁寧に説明していきたいと考えています。
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保団連
- 現状の制度を維持してほしい、少なくとも現状でも負担が重いのに維持してほしいというのが、多くの高額療養費制度利用者の声です。一方で、医療・介護を支える提供側をインフレ対応、物価対応も必要で、両方必要だと思うのです。患者さんが、医療提供体制が維持されても、結局給付が使えなければ皆保険が利用できないということになり、特に、この現役世代も含めて最後のセーフティネットであるという、特別な存在であると当会は考えていますが、であれば、税収や社会保険料の上振れというところをいま一度ご一考いただいて、予算の修正、現状維持というのを是非検討いただきたいと、要望になりますが、そういったことを是非受け止めていただきたいと思いますので、大臣のコメントを最後お願いします。
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上野賢一郎厚労大臣
- 制度自体は、持続可能なものにしていくという観点は非常に大事ですので、繰り返しとなり大変恐縮ですが、制度全体についても、不断の見直しが必要だと思いまして、その一環として今回このような形で取りまとめさせていただきました。


