医療・社会保障削減に固執
骨太方針を閣議決定
政府は6月7日、2022年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。アベノミクスを継承するとともに、防衛費の大幅増を進める一方、医療・社会保障費抑制を続けるとした。全国保険医団体連合会(保団連)は6月8日に談話を発表。軍拡は中止し社会保障抑制から脱却すべきと批判した。
防衛費5年で倍増
新自由主義からの転換を掲げた岸田文雄首相だが、「骨太の方針」では、大企業の成長を優先するアベノミクスを踏襲した上、防衛予算倍増を念頭に「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」として軍事力の大幅拡大を打ち出した。防衛費倍増に要する5兆円超の財源があれば、全ての窓口負担を無料にできる。
また、賃金増を進めるのではなく、「資産所得倍増」として預貯金を資産運用するよう求めている。生活改善は自己責任ということだ。他方、目玉公約だった大株主ほど税負担が軽くなる金融所得課税の見直しは棚上げされている。
岸田政権が掲げる「新しい資本主義」とは、大企業の成長に偏重した新自由主義の焼き直しと軍事拡大路線である。
マイナ受付整備の義務化
医療・社会保障では、75歳以上の窓口負担2割導入など負担増メニューを盛り込んだ改革工程表を継承した上、23年度予算でも社会保障費の自然増を抑制する方針を続けるとした。
また、患者・国民が望んでもいないマイナンバーカードの保険証利用について、23年4月から医療機関にシステム導入を原則義務化する方針を打ち出した。さらに、今後の導入状況を踏まえ、保険証は原則廃止を目指す。マイナ受付整備の義務化などは断じて容認できるものではない。
「かかりつけ医」 機能の制度整備
医療提供体制に関わって、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」を盛り込んだ。別途、財務省財政審「建議」では、医療費抑制を念頭に、かかりつけ医機能の要件を法制化した上で、これらを備えた医療機関を「かかりつけ医」として認定する制度創設を提案しているが、事実上1人の医師や1つの医療機関が1人の患者に対応する仕組みでは、患者の疾病管理・健康確保は困難である。身近で頼れる地域の診療所に向けて、マンパワー確保や設備改善への手当てとともに診療報酬改善、後方病床確保などきめ細かな施策こそが必要だ。
骨太では、その他、対面診療を間引くことを奨励するリフィル処方箋整備、オンライン診療活用や、病床削減を進める地域医療構想の推進なども盛り込んでいる。
国民皆歯科健診
歯科では、生涯を通じた歯科健診として「国民皆歯科健診」の具体的検討や、金パラ問題を念頭に「市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進」などが記された。保険でより良い歯科医療の実現に向けて建設的な議論が望まれる。
骨太の方針の概要
医療費、負担増 |
23年度社会保障費の自然増抑制を継続 75歳以上の医療費2割負担導入などを掲げた「改革工程表」を引き継ぐ 保険料負担のあり方などで負担能力に応じた負担のあり方等を検討 自治体が行う国保財政を支える措置(法定外繰り入れ)の早期解消を進める |
医療提供体制 |
かかりつけ医機能が発揮される制度を整備する 病床削減を進める地域医療構想を推進 |
医療のデジタル化 |
マイナ保険証利用体制整備について、23年4月から医療機関、薬局に原則義務化 24年度中を目途に保険証発行の選択制導入。さらに保険証の原則廃止を目指す |
診療報酬改定、コロナ対応 |
リフィル処方箋を普及・定着させる仕組み整備を、周知・広報の推進とあわせて進める コロナ入院患者受け入れ医療機関等に対する補助について、診療報酬の特例等も参考に見直す |
安全保障 |
防衛費を約11兆円に倍増することを念頭に防衛力を5年以内に抜本強化 |
経済財政 |
アベノミクスを堅持 |