保険証廃止は非現実的
政府は、「骨太の方針」で23年4月以降に医療機関等でのマイナンバーカード保険証利用の受付システムの導入義務化、保険者による保険証発行の選択制導入、将来的に保険証を原則廃止する方針を示した。保団連は、政府の方針に強く抗議するとともに、中止・撤回を求めた。
6月7日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)では、▽保険医療機関・薬局に、23年4月からマイナ受付等システム導入を原則として義務付ける▽導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する財政支援等の措置を見直す▽24年度中をめどに保険者による保険証発行の選択制の導入を目指す▽オンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す—との方針が盛り込まれた。
現行保険証で特段の支障なし
政府は、これまでマイナ受付事業に7000億円もの巨費を投入してきた。しかし、保険証提示による現行の資格確認は、本人確認含め特段の支障が生じていないこと等から、システムを運用開始した医療機関等はわずか19%にとどまる。
マイナ受付の導入・普及は、医療現場や患者・国民が要望したものではない。それどころか、医療現場では、ICT機器に不慣れな利用者への手助け、マイナカード紛失等のトラブル増や日々のシステム運用管理はじめさまざまな負担増が懸念される。
マイナ受付について「受診時に投薬履歴や健診データが閲覧できる」と利便性が宣伝される。 しかし、保険証(被保険者番号)によるオンライン資格確認でもシステム上は可能であり、災害時には保険証による医療情報の閲覧も運用規約で認めている。3月の福島県沖地震でも使われた。保険証による平時の受診の場合でも医療情報閲覧を認めれば済む話である。
事実上のカード取得義務化
24年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制を導入するとしたが、被雇用者・行政サービス受給者はじめ加入者に対して、保険者・雇用者から、マイナカード取得の圧力がこれまで以上に強くかけられることが危惧される。保険証が原則廃止ともなれば、マイナカードを持たない者は、公的保険診療が受けられなくなる。保険証の原則廃止は、事実上、マイナンカード取得義務化であり、マイナカード取得は任意とする法令に明らかに抵触する。
カード利用は任意にすべき
カードを持ち歩かずに大切に保管している人も多い。医療機関への持参を強要することはできない。保険証の廃止は非現実的であり、マイナカードを保険証として使うかどうかは患者の選択にせざるを得ない。
厚労省は、保険証の廃止後も「加入者の申請があれば保険証は交付される」(社保審、5月25日)とするが、保険者に申請意向を確認する実務負担が生じる。保険証は原則交付してマイナンカードの利用は任意とする形がもっとも簡便かつ合理的である。
保団連は政府・厚労省に対して、医療機関におけるマイナ受付等に係るシステム導入の義務化、保険者における保険証発行の選択制導入や保険証の原則廃止などについて中止・撤回することを強く求める。